子供のころから身近な虫「ダンゴムシ」。実は虫ではなくエビやカニと同じ甲殻類なのをご存じですか?となると、気になるのは茹でると赤くなるのかどうか。果たして答えは?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ダンゴムシは虫じゃない?
子供のころから非常に身近な生き物であるダンゴムシ。だれでも一度は手に取り、コロコロと転がしたことがあると思います。
しかし、そんな身近な生き物であるダンゴムシが虫ではなく、実はエビやカニと同じ甲殻類の仲間なのです。
ダンゴムシは「節足動物門>甲殻亜門>軟甲綱>真軟甲亜綱>フクロエビ上目 >ワラジムシ目」に分類されています。この『軟甲綱』の中にダンゴムシだけではなく、エビやカニも含まれています。
子供が大好きなメジャーな虫カブトムシは、「節足動物門>昆虫綱……」です。このことからも、ダンゴムシが虫ではなく、エビやカニの方が近い存在だということが分かります。
甲殻類の定義
甲殻類の条件は
・体がかたい殻に覆われている
・触角が2対で合計4本有する
と、なっています。
甲殻類と聞くとエビやカニなどの水中の生き物が多く、水中の生物という部分も当てはまりそうですが、呼吸についての定義は特にないようです。
「節足動物」は、「昆虫類」「甲殻類」「クモ類」「多足類」の4種類に分類され、カブトムシなどの虫は「昆虫類」で、エビは「甲殻類」、クモやサソリなどが「クモ類」、ムカデやヤスデなどが「多足類」に分かれていきます。
どれも同じ分類のように思える虫も、実はかなり細かく分かれています。
多足類や昆虫類などの触角は2本なのですが、ダンゴムシには触角が4本あるため、甲殻類に分類されているのです。
フナムシも甲殻類
ちなみに、ダンゴムシの他に陸上で生活する甲殻類はというと、 ダンゴムシに似ている「ワラジムシ」、そして、海でよく見る「フナムシ」も同じように甲殻類です。
え、フナムシはゴキブリの仲間じゃないの?と、いう人がいそうではありますが、 フナムシもよくよく観察すると虫よりもエビやダンゴムシによく似ていることが分かります。
「殻に覆われて、触角が4本ある」事から甲殻類である条件を満たしているため、フナムシも甲殻類に分類されているのです。
茹でても赤くはならない
ダンゴムシがエビやカニの仲間だとという事から、茹でると赤くなるという噂があるようですが、これは間違いです。
エビやカニを茹でると赤くなるのは「アスタキサンチン」という色素に関係しています。この赤色の色素は、植物性プランクトンであるヘマトコッカス属が自ら造る赤い色素の「アスタキサンチン」に由来しています。
アスタキサンチンが食物連鎖の果てにエビやカニの体内で蓄積されます。茹でたり焼いたりして熱を加えると、この「アスタキサンチン」がタンパク質から遊離して、鮮やかな赤色に発色するのです。
したがって、エビやカニなどの甲殻類であっても、「アスタキサンチン」を持ったプランクトンの食物連鎖の中に加わっていないと、赤色の色素を持つことはなく、茹でても赤くなりません。
ですので、通常ではダンゴムシはもちろん赤色の色素を持っていないため茹でても赤くならないというわけです。
ダンゴムシに「アスタキサンチン」入りのエサを与え続ければ、そのダンゴムシを茹でると赤くなる可能性が高い、と推測できます。ただ、この実験をしているデータは特にないため、推測の域は出ませんが・・。
グソクムシはエビやカニの仲間に思える
深海に住むオオグソクムシは大きなダンゴムシのようなシルエットをしていますが、エビやカニの仲間と言われてもなんとなく納得できる気もします。
反対に、ムシと名前に入っていても虫の仲間に思えないのは、きっと水の中に生息しているかどうかがイメージに関わっているからでしょう。
虫は地上の生物、甲殻類は水中の生物というイメージは強いですが、分類には持っている形態や、見た目の特徴などが大きく関わっているというのは分類学の面白いところかもしれませんね。
<近藤 俊/サカナ研究所>