誰もが一度は見たことがある「あのクラゲ」ことミズクラゲ。クラゲと言えば中華料理の食材として有名ですが、ミズクラゲは食用にはできないのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
愛媛で「ミズクラゲ」が大発生
瀬戸内海に浮かぶ愛媛県今治市の大島で、いまとある生物が大発生しており、問題になっています。
その生き物とはクラゲ。「ミズクラゲ」という種類が、島の周囲の海で大量発生しているのです。
同島では、定置網などに大量のクラゲがかかり、その重みで網が破壊される、網目をクラゲが塞いでしまうために漁獲量が減る、などといった被害が出ているといいます。
ミズクラゲは5年前から増え始めたということですが、大発生の原因はいまだわかっていません。
「あのクラゲ」ことミズクラゲ
さて、生き物について詳しい人でなくても、ミズクラゲという名前はひょっとしたら聞いたことがあるかもしれません。たとえ知らなくても、その写真を見れば「見たことがある!」となるでしょう。
ミズクラゲはかさの直径20㎝ほどの半透明のクラゲで、全国の海岸でふつうに見られる種です。浅い内湾に多く、ときに都心の運河で大量発生することもあります。
ほかのクラゲと比べても遊泳力は低く、しばしば浜に打ち上げられています。面白がって触る人もすくなくありませんが、弱いながらも触手に刺胞毒を持ち、体質によっては刺されるとピリピリ痛むことがあるので注意が必要です。
食べられないの?
さて、クラゲと言えば中華料理の材料としても名高い存在。このミズクラゲを見て「ゼリーみたい」「食べられそう」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。
実際のところ、ミズクラゲを食用にできるという内容の論文が発表されています。それによると、食用にされるヒゼンクラゲやエチゼンクラゲ同様、まず大量の食塩で水分を抜き、さらにミョウバンに晒してタンパク質を固定したのち、真水に晒して食塩とミョウバンを抜けば食用に適した状態になるといいます。
その味わいはというと、やや独特の海水臭があるもののパリパリとした歯ごたえがあり、酢の物などにすれば美味しく食べられるそうです。
ただし、クラゲは体組成のほとんどが水分であるため、食材として加工すると元のサイズの数十分の1にまで縮んでしまいます。ミズクラゲの場合はメダル程度のサイズになってしまうため、その手間を考えると食用にされる未来はあまりなさそうです。
なお、一般的に食用にされるクラゲは、傘の直径が1mほどにもなるような大型種で、触手の部分が特に高い価値を持つといいます。ミズクラゲの場合はそもそも触手が大きくならないので、その点でも食材としての有用性は低いでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>