我々がよく食べる「エビ」の仲間には、なぜかやたらと「動物の名前」を冠するものが多いです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ブラックタイガーはウシエビ
肉食動物の代表とも言えるトラと、草食動物で食肉としても重要なウシ。言うまでもなく、この2つは全く違う生き物です。
しかし、この2つの生き物の名前を、同時に戴く生物がいます。その生物の名は「ウシエビ」。クルマエビの仲間のエビで、とてもポピュラーな食用種です。
ポピュラーと言われても聞いたことがないという人もいるかも知れませんが、スーパーに並ぶときは英語名の「ブラックタイガー」が用いられることが多いといえばピンとくるでしょう。和名は「ウシのように大きいこと」、英名は「体色が黒く、トラのような縞模様があること」が由来となっています。
色々な動物の名前を持つエビ
実はエビの仲間には「他の動物の名」を関するものがいくつがあります。
上記のウシエビのほかには例えば「サルエビ」「クマエビ」といったものもあります。サルエビは細かい毛が生えていること、クマエビは共食いが多く、クマのように獰猛な性質をもつことが和名の由来です。
標準和名ではありませんが、カラスエビと呼ばれるものもいます。ウシエビの中で、色合いが特に黒いものがこう呼ばれているそうです。
ここで挙げたエビたちは、いずれもクルマエビ科のエビでシルエットがそっくりなので、細かい特徴を他の動物に例えて見分けたのではないかと思います。
「ゴジラエビ」まで
さて、ここまで挙げたものはいずれも実在の動物に例えた名前をつけられていますが、実は空想上の動物に例えた名前を持つものもいます。それは「ゴジラエビ」。
このエビ、標準和名はイバラモエビといいます。その名の通り、頭部後方に鋭いトゲが縦に並ぶのですが、これがゴジラの背を彷彿とさせるからこのように呼ばれているようです。
その名にそぐわずあまり大きくないエビですが、味が非常に良く、かつては漁師が自家消費していた程度でしたが近年は市場に出回るようになっています。もし魚市場で「ゴジラ」の文字を見かけることがあれば、ぜひ買ってみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>