渓流釣り人口が増える一方で、マナー違反によるトラブルも急増中。釣り場を守り、気持ちよく楽しむために、すべてのアングラーが知っておきたい基本のマナー5つを紹介する。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・荻野祐樹)
3. 先行者に気を配る
渓流釣りにおいて、最も多いトラブルが「先行者とのすれ違い」だ。著者自身も、近年この種のトラブルに見舞われることが多くなってきたと感じている。
先に入渓している人がいるにもかかわらず、そのすぐ上流や下流に平然と入り込んでしまう。これは、釣り人の暗黙のルールを完全に無視した行為だ。
気まずい空気になるばかりでなく、魚が警戒してお互いに釣れなくなることも多く、誰にとってもメリットのない行動である。
釣り人同士が気持ちよく川を共有するためには、以下の基本マナーを意識しておきたい。
基本は「釣り上がりスタイル」
渓流釣りは入渓場所から釣り上がって行く「遡行スタイル」が基本。もし入渓したいポイントに先行者がいた場合、最低500m、出来れば1km程度の距離を空けて入渓したい。
それも、可能なら下流側から入渓するのが暗黙のマナー。小規模河川の場合はポイントが非常に限られてしまうため、別の川に行くなどの配慮も必要だ。
釣り降る場合の注意点
場所によっては釣り降り(下流方向に向かって釣っていく)を行いたいこともあるだろう。仮に釣り降りを行う場合は、下流側にも1km程度に渡って人がいないことを確認しておく。下流側に人がいるにもかかわらず釣り下ってしまえば、遡行中のアングラーと正面衝突することになる。
混雑が予想される人気河川では、そもそも釣り下りを選択しない方が無難だ。解禁日、禁漁直前、放流直後などの時期は特に混雑するため、他の川への移動も視野に入れておきたい。
万が一追いついてしまったら?
慎重に距離を取って入渓しても、状況によっては先行者に追いついてしまうことがある。その場合は、声をかけて下流側から静かに脱渓し、別のポイントへ移動するのがマナーだ。
絶対にしてはならないのが「追い越し」。これはルール違反以前に、釣り人同士の信頼を損ねる行為であり、場合によっては現場での口論に発展することもある。
すれ違いを避けるために
最近ではSNSやYouTubeなどの影響で、特定の渓流に人が集中しがちになっている。事前に釣行予定の河川について情報収集を行い、「混雑しにくい時間帯・支流」を選ぶ意識を持つだけでも、トラブルの多くは回避できる。
渓流釣りは一見静かに見えて、実は非常に繊細な釣りだ。その場の空気感や魚の警戒心、自然との距離感、そして「人との距離感」が釣果を大きく左右する。
釣り場で顔を合わせたときに、気持ちの良い挨拶が交わせるような距離感を、常に心がけておきたい。
4. ゴミは必ず持ち帰る
釣り場におけるゴミ問題は、もはや一部のモラル欠如では片づけられない深刻な課題となっている。特に渓流エリアは人の目が届きにくいため、「バレなければいい」と考えてポイ捨てをする人が後を絶たない。
その結果、地域住民からの苦情が増えたり、漁協の負担が増加したりして、釣り場の閉鎖や立ち入り制限につながるケースも珍しくない。
渓流釣りは、他の釣りジャンル以上に自然環境と密接に関わっている。だからこそ、自分の出したゴミはもちろん、可能であれば「人が捨てたゴミまで拾う」くらいの心構えを持ちたい。
以下に、筆者が実践している工夫を紹介する。
ゴミを出さないように釣る
食事はできるだけ車の近くで取り、出たゴミはビニール袋などにまとめて持ち帰るようにしている。
飲み物はペットボトルに統一し、ビクの中やドリンクホルダーにしっかり固定しておけば、転倒や流出のリスクも少ない。
飲み終わったら、車に戻ったタイミングで新しいものに交換する。この“ワンアクション”が無駄なゴミを防ぐポイントだ。
仕掛けゴミは「専用ボックス」で回収
仕掛けの切れ端やラインくずは意外と目立ちやすく、風や水で流れて自然に悪影響を与えることもある。
筆者は第一精工の「ストリングスワインダー」を愛用しており、釣行中に出たラインの端材を簡単に収納できる。
その他、各メーカーが展開しているマナーボックスも携帯性に優れており、ウェストバッグに1つ忍ばせておくだけで安心だ。

ルアーのパッケージは持ち込まない
ルアーで釣る場合、ルアーのパッケージは釣行前に処分し、ルアー本体はボックスに収納しておく。こうすればゴミが出ないし、釣り場でスムーズにタックルチェンジできるため、実釣面でもメリットがある。
根掛かりは出来るだけ回収
渓流は浅い場所も多いので、危険が少ない場所であれば、安全を確保した上で可能な限り回収しておこう。そもそも、根掛かりを取ろうとした時点でそのポイントは魚の警戒心が高まっていてダメになっている。
そのため、渓魚の警戒云々を気にする必要はない。その場で粘るよりは仕掛けを回収して移動する方が得策だ。
エサ釣りで根掛かりした場合も、水中の枝や岩を蹴ることで意外とあっさり外れることがある。
5. 小型はリリースして必要以上に持ち帰らない
渓流釣りの魅力のひとつに、釣った魚をその場で持ち帰って食べられる「キャッチ&イート」がある。しかし、魚の数に限りがある渓流において、必要以上にキープする行為は資源を大きく損なう要因となる。
とくに釣り人が多くなる解禁直後や週末は、同じ支流に複数のアングラーが入渓していることも多く、ひとりの過剰なキープが川全体の釣果に響く可能性もある。
また、小型の魚は成長の途中段階であり、将来的に大きく育てばさらに楽しみが広がる。今だけでなく、「次の世代」「次の釣行者」への配慮を持って魚と向き合いたい。
漁協の定める規定サイズを守る
渓魚には、漁協ごとにサイズの規定が定められている。基本的には「12cm以下はリリース」となっている河川が多いが、そもそも15cm以下では可食部が非常に少なく、持ち帰っても調理に苦労する。
筆者は自分の基準として、4月までは16cm、5月以降は18cm以上の魚を対象に、1〜2食で食べきれる分だけをキープしている。こうした自分なりのルールを設けておくと、現場で迷うことも少なくなる。
このサイズなら1匹でも十分なご馳走だ(提供:TSURINEWSライター・荻野祐樹)
針を飲まれたら素早い判断を
リリースを行う際は、魚体にダメージを与えないように素早く対応するのがポイントだ。特に針を深く飲まれてしまった場合は、無理に外そうとせずラインをカットしてリリースする方が、生存率が高いとされている。
ただし、掛かりどころが悪く、出血していたり明らかに衰弱している場合は、迷わず持ち帰って美味しくいただくべきだろう。命をいただく以上、最後まで責任を持って向き合う姿勢が大切だ。
マナーを守って楽しい釣りを!
今回紹介した5つのマナーは、特別なことではない。どれも「アングラーとして」以前に、「自然と関わる人」として当たり前に守るべき基本的なルールだ。
渓流釣りのフィールドは、漁協や地域の人々の努力、そして自然そのものの恵みによって成り立っている。そのことを忘れず、釣り人一人ひとりがほんの少しだけ意識を変えるだけで、釣り場の未来は大きく変わっていく。
マナーを守ることで得られるのは、釣果だけではない。トラブルのない静かな釣行、自然への敬意、そして「また来たい」と思える釣り場との良い関係。そうした積み重ねが、きっと次の好釣果にもつながっていくはずだ。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>