渓流釣り人口が増える一方で、マナー違反によるトラブルも急増中。釣り場を守り、気持ちよく楽しむために、すべてのアングラーが知っておきたい基本のマナー5つを紹介する。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・荻野祐樹)
渓流釣り解禁で目の当たりにした現実
渓流釣りの自然の中で魚と向き合うひとときは、他の釣りにはない魅力がある。人が増えるのは嬉しいことだが、それと比例してマナー違反やトラブルも目立つようになってきた。
渓流釣りの解禁日、いつもの支流で目にした光景は、その象徴とも言えるものだった。遊漁券を持たずに川へ入る者、先行者を無視して割り込む者、ゴミをその場に放置する者……。渓流釣りの基本すら守られていない現実に、釣り人として強い危機感を抱いた。
海釣りではすでに、漁港の閉鎖や立入禁止エリアの拡大といった事態が各地で起きている。このままでは、渓流釣りも同じ道をたどることになりかねない。
そこで今回は、渓流釣りを楽しむすべての人に向けて、最低限守るべき5つのマナーを紹介したい。どれも難しいことではない。だが、これを守れるかどうかが、釣り場の未来を左右する。
1. 遊漁券は絶対に用意する
まずは渓流釣りに行くために必須となる「遊漁券」について解説しておきたい。
河川は基本的に、それぞれ管轄の漁協が管理している。漁協は河川清掃や稚魚・成魚の放流など、釣り場の保全に大きく貢献しており、その活動によってアングラーは渓流釣りを楽しめている。
言い換えれば、遊漁券を購入することは、釣り場への「参加費」であり「感謝の証」でもある。
「山奥だからバレないだろう」といった意識は完全に誤りだ。釣り人の増加に伴い、無断入渓へのチェックも強化されている。釣りを正々堂々と楽しむためにも、遊漁券の準備は絶対に欠かしてはならない。
入手方法は複数ある。現地の釣具店や商店、「遊漁券取り扱い」の表記がある店舗のほか、漁協の窓口でも購入可能だ。

さらに最近では、「FISHPASS」や「つりチケ」などのスマートフォンアプリを利用してオンラインで遊漁券を購入することもできる。
事前にアプリで河川を検索し、日付や種類を選ぶだけで簡単に手続きが完了する。現地で探し回る手間もなく、移動中や前日の夜など、好きなタイミングで購入できるのがメリットだ。
行き先が決まっているなら、出発前にアプリで確認・購入しておくと安心だ。
年券と日券を選ぶ
遊漁券には、シーズン中何度でも使用できる「年券」と、1日のみ使用できる「日券」がある。年券はやや高価で写真が必要なケースが多いが、何度も釣行するのであれば年券は必須だ。
一方日券は写真不要のケースが多く、年券より安価で入手できる。私が通っている兵庫県の揖保川の場合、3回以上釣行するなら年券、2回以下なら日券の方がお得になる金額に設定されている。
遊漁券は見える場所に
購入した遊漁券は、ベストやビクなどの目立つ場所に取り付けておかねばならない。また、漁協関係者に提示を求められた場合は快く応じよう。この時に、各支流の釣れ具合など、様々な情報を教えてくれたりするので、実に有意義な時間となる。
2. 駐車場所を考える
渓流釣りでは車で山奥へ向かうことが多く、駐車場所の判断が釣行の第一歩となる。しかし、標識がない=自由に停めてよいと勘違いしてしまう人もいる。これは大きな間違いだ。
地元住民や他の釣り人とのトラブルを避けるためにも、以下のポイントには十分配慮したい。
公共物周辺には絶対に停めない
山間部であっても、地域住民の生活道路は確実に存在している。バス停やゴミ集積所、郵便受け周辺など、一見広く見える場所でも、本来の目的があるスペースだ。これらの場所は絶対に駐車してはならない。
特にゴミ集積所は、早朝に回収車が来ることも多く、釣行中に迷惑をかけてしまうケースもある。

また、見落としがちなのが、何の変哲もない場所に立っている消火栓。万が一の火災時、地域の消火活動に大きな支障が出るため、周囲への駐車は厳禁だ。

民家の近くには停めない
里川の場合、釣り場のすぐそばに民家があるケースも珍しくない。こうした場所に無断で駐車すると、住民の方の生活に支障が出たり、防犯面で不安を与えてしまう。
特に、早朝や夜明け前の釣行では、エンジン音やドアの開閉音が迷惑になることもあるため、より一層の配慮が必要だ。
農地や空き地に注意
誰も使っていないように見える空き地でも、実際には個人の所有地や農地であることが多い。
雑草が生い茂っている場所でも、「耕作放棄地」や「次回の作付け準備中の土地」である可能性がある。
目印がなくても、勝手に停めるのはトラブルのもと。管理者の許可を得ない限り、無断駐車は避けよう。
道幅を確保して停める
良さそうなポイントが見えると、つい車を停めたくなるが、狭い道路への駐車は事故や通行妨害の原因になる。
最低でも車一台が余裕をもってすれ違える幅を残して停めるように心がけたい。釣りの前に「すれ違えるか?」を自問する習慣をつけるだけでも、トラブルの多くは防げる。
通行禁止区間に注意
渓流は大自然の中に飛び込む釣り。場所によっては除雪されていない通行禁止区間があったり、落石による通行止めとなっている事がよくある。こういった場所は、釣り人自身の安全にも関わるため、きちんとルールを守るようにしたい。