北日本では人気のある大衆魚なのに、それ以外では偽装に使われてしまうこともあったかわいそうな魚がいます。
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冬の北海道の漁は「氷に穴をあけて」行う
温暖化が進んでいる現在でも、厳しい寒さが訪れる冬の北海道。道東からオホーツク海沿岸にかけては大小さまざまな湖がありますが、その多くが冬季の間、寒さで湖面が凍結してしまいます。
しかし、そんな凍り付いた湖でのみ行われる漁があります。それが「氷下網漁」。湖面の氷に穴を開け、そこから網を入れて湖底に網を敷き、魚を捕るというものです。
凍り付いた湖は一見すると死の世界のように見えますが、分厚い氷の下では魚たちが活発に活動しています。そのため氷下網漁では、様々な魚を漁獲することができるのです。
主要漁獲物のひとつ「チカ」
そんな氷下網漁で漁獲される魚の代表がチカです。見た目は大きなワカサギ、もしくはシシャモのような魚で、これらの魚と同じキュウリウオ科に属しています。
同じ科に属するアユと顔つきが似ており、またアユと同じようにスイカやキュウリのような匂いが強い個体もいます。大きくても20㎝前後の小魚ですが、大きな群れで行動しており、獲れるときは大量に漁獲されます。
北海道には多く生息している魚ですが、全国的にはマイナーな魚にとどまっています。その理由は生息域が北に偏っているからで、わが国では岩手県よりも北の海にしか生息していません。北海道と青森以外ではあまり食用にされることはないようです。
なお、茨城県周辺で「チカ」として釣られているものはワカサギの降海型であることが多いようです。
ワカサギのニセモノ?
そんなチカですが、最近では関東の小売店でも販売されているのを見かけることがあります。しかし実は以前から、関東でもチカは売られていました。それなのになぜ知名度がなかったのかというと、それは「ワカサギ」として売られていたためです。
チカとワカサギは本当によく似ており、知らない人がチカを見たらまずワカサギだと思ってしまうほど。関東での知名度のなさもあり、知名度の高いワカサギの名を借りて売られることが多かったようです。ただ最近は景品表示法などにより、別種であるワカサギの名前を使って販売することができなくなったため、正しくチカとして販売されるようになっています。
チカはワカサギより大きい個体が多く、やや骨が障るものの身の味も濃いです。北海道においても、ワカサギのほうが高級ではありますがチカもとても愛されており、こちらのほうが好きだという人も多いといいます。
ワカサギ同様天ぷらで美味しいほか、大きさを生かして一夜干しにしても最高の味わいです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>