夏の上り鰹(初鰹)はさっぱりした味が、秋の戻り鰹は脂の乗りが魅力と言われていますが、今その「常識」に異変が起こっています。
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漁場だけでなく「旬」も変なことに
さて、カツオは例年南方から日本沿岸に回遊し、各地で水揚げが始まります。5月から6月には千葉県沖~常磐沖まで北上し、水揚げされて関東の市場に並ぶのですが、東京ではこのカツオを(狭義の)初鰹と呼びます。
一般的に初鰹は脂が少なく、さっぱりとした「江戸っ子好みの」味とされています。しかし今季、千葉沖で獲れているカツオはなぜか、すでにしっかりと脂が乗っている状態です。
江戸時代はともかく、最近の嗜好からすれば脂が乗ったカツオのほうが人気が出るため市場では歓迎ムードのようですが、旬のイメージを尊ぶ向きからは不満の声もあるようです。
この異常な脂ののりと、上記の漁場のバラツキ、水揚げ地の変容が同時に起こっていることを考えると、これらの現象が互いに全く無関係とは思えません。
漁場の異常は黒潮大蛇行などを原因とする説もあるのですが、だとしても件の大蛇行の原因がはっきりしていない以上、この現状がいつ解消されるかも不明と言わざるをえない状況。
もしかすると、今後はこれまでのような「カツオの旬」の考え方は通用しなくなるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>