伊藤さとしのプライムフィッシング。テーマは「チョウチンウドンセット」。今回はなぜグラスムクトップを使うのかについて考えてみよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊へらニュース伊藤さとし)
なぜグラスムクトップ?
いつも疑問に感じていることを尋ねてもいいですか?
「いいよ、何?」
なぜグラスムクトップを使うのですか?抜きチョウチンだからバラケをぶら下げる浮力が必要ないってことですか?
「ははは、そっちね。確かに抜き系の時はムクトップを使うことが多いけど、おもな理由はそこじゃないよ」
じゃあ何ですか。
「ハリスのフォール中の動きを読みたいからだよ。もちろん下ハリスのことだけどね」
倒れ込みとも呼びますけど、その動きを読むのにグラスが必要だと?
グラスムクの優位性
「ではこうしようか。何でタテ誘いをかけるのかな?」
それはもう、動き(アタリ)を出すために決まってるでしょう。
「正解。じゃあタテに誘うとハリスはどうなるのかな?」
穂先を持ち上げて元に戻すときに自由落下を始めますね。
「おお!大正解。その時、下ハリスの状態はどうなってる?」
はじめのうちは湾曲がきつく、次第に重力によって垂直に近づくと思いますけど。
「そうだよね。問題はその湾曲だよ。ピンと張った状態と曲がった状態では、どう考えたって前者のほうが何かアクションが加わったときの伝達性はいいはずだよね。まあこの場合のアクションとは、総じて魚の触りやアタリのことを指すんだけどね」
逆に曲がっていると伝わりづらいと思います。
「その伝わりづらさをどうにかカバーしようとすればウキのトップは細いほど有利だと思わないかな?」
なるほど。確かにそうですね。しかも魚から見れば自由落下している時のほうが不自然さを感じづらいから、エサに近づいてくる。強いては触りやアタリを出す。
「そうなんだよ。しかもこの時期の魚の動きは盛期に比べてデリケートになるから、余計に感度のいいウキがほしいと思うのは釣り人のさがでしょう」
微細な触りを読む
では聞きますけど、それらはパイプトップでは出ないのですか?
「そんなことはない。アタリならまず出るだろうね。でも重要なのはそこじゃない。要は微細な触りがウキに伝わるか伝わらないか、そこが問題なんだよ。だって考えてもみてよ。触りがウキに現れなければ情報が得られずに『魚がいない』の一言で片付けられてしまうかもよ」
でも多少でもウキに変化があれば「魚いねぇ」などと誤認せず、次に何をすべきか考えられる。なるほど。確かにこれは道理ですね。
「あとは視認しやすいかどうかもある。下バリ一つと食わせ(厳密には下ハリスも)。この重さ分のナジミ幅をウキに現すとしたら、浮力が少ないトップほどナジミ幅(ストローク)は増える」
はい。そうですね。
「逆に浮力の強いウキ(ここではおもにパイプトップ)だとストロークが少ないから、フォール中に出る止めとかが分かりづらくなる。慣れてる人なら今のは触りだと認識できるかもしれないけど、どうせなら分かりやすいウキを使ったほうがいいでしょ」
そうですね。
「しかも最初に記者さんが言ったようにバラケをぶら下げないのなら、何も浮力の強いウキを使う必要もない」
つまり厳寒期特有の微細な触りを読むための武器、それがグラスムクトップなわけですね。
「そういうこと。アタリだけでいいなら、ここまで原稿も伸びないだろうしね(笑)」
次回も「チョウチンウドンセット」です。
<週刊へらニュース伊藤さとし/TSURINEWS編>