スポーツフィッシングを嗜む人にとって大事なことは何か。釣り人同士のマナーやゴミ拾いなど、挙げだしたらキリがありません。しかし、それらはあくまで"人同士"の間でしかないマナーです。そこで今回は、魚に対してのマナーである「キャッチ&リリース」に話題を限定して話をしようと思います。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・泉 陽登)
手を濡らす意味
筆者は、食用としてではなくスポーツフィッシングとして釣りを始めました。最初は右も左も分からない自分に、自然の遊びや釣りを教えたのは祖父です。そんな祖父は毎回筆者に対し「魚に触る時は必ず水で大体10秒つけてから触れ」と耳にタコができるほど筆者に言い聞かせてきました。当時子供だった自分はただ従って水に手をつけて魚に触れるように心がけていました。しかし、子供の頃は純粋に続けていたものが、ある日突然として疑問に思うことは誰しもがある経験でしょう。
ある程度の年齢になった際にふと、なぜ魚に触れるのに「水で手を濡らす」必要があるのかと疑問に持つようになったのです。色んな人に聞いた所、人の手で火傷をしないようにするためだと教わりました。その認知はつい最近まで自身の頭の中に強く根付いていました。
しかし、実際魚は人間の温度で火傷をすることはないらしいのです。ではなぜ水で手を濡らす必要があるのか。それは魚の”ヌメリ”を取らないためだと後に考えるようになりました。
ヌメリの効力
魚のヌメリを取らないためと言いましたが、そもそも魚のヌメリはどんな効力があるのか。釣りをせずとも魚を触ったことがある人なら、あのヌルヌルの感触を知っているはずです。あのヌメリは魚にとって、”第二の皮膚”と言われているほど重要な役目を担っているのです。
人や他の動物の皮膚は角質化され、シールドのような役割をしています。しかし魚の皮膚は人間と違い角質化されていません。そこでシールドの役割を果たしているのがヌメリなのです。魚のヌメリは防御因子が含まれており、寄生虫や細菌の侵入を防ぎます。他にも、物理的ダメージの減少、水中の泳ぎやすさ等様々な効能を担っています。
このヌメリは魚にとってなくてはならないモノです。そんなヌメリを取らないためにも、水に手を冷やして慣らすことは大事になってきます。例え人間の体温で火傷をしなくても、しっかり水で手を濡らすことは魚の体を守るために必要な事の一つと言えるでしょう。
他に気を付ける事
ここまで水に手を濡らすことの重要性を話してきましたが、他にも魚に配慮しなければならない事はたくさんあります。代表的な例を挙げるならバス持ちも気を付けなければならないことの一つです。ブラックバスは強靭な顎の骨があるため、口に手を入れて取り込むランディング方法、通称バス持ちがあります。しかし、他の魚の顎はそこまで強くはありません。下手に力を入れてしまうと簡単に顎骨が折れることもあるので、安易にバス持ちをするのは得策だとはいえないので注意しましょう。
また、魚を陸に上げてしまうのも気を付けなければならないです。長時間魚を陸に上げたままだとダメージがどんどん蓄積されていってしまいます。撮影や観察をするにしても、なるべく水辺から遠ざけずにすぐにリリースできるように心がけましょう。
ルールは守ろう
ここまでキャッチ&リリースを主体として、魚の扱いをテーマに話してきました。しかし、昨今で話題になっている外来種に対しては例外がいくつかあります。
バス釣りをしている人なら、釣り場で「外来種の放流禁止」といった注意書きや看板を見たことがあるはずです。外来種は地域や場所によってキャッチ&リリースを禁止している釣り場が見受けられます。その中で釣りあげた外来種をリリースしてしまうのはもちろんご法度行為です。釣り自体は禁止されていなくても、リリースが禁止されている場所というのは決して珍しくはありません。
外来種は”外来生物法”という法律の下、様々な規制が設けられています。この法律の中ではキャッチ&リリースを禁止していませんが、リリース禁止の場ではそのルールを破らないように注意しましょう。この法律に該当する外来種はブラックバスやブルーギルだけではありません。その種類は85種類にも上ります。守るべきことをしっかり守って、釣りをするようにしましょう。
また出会えるように
「遊んでくれた魚には敬意を示せ」これも祖父から教わったことの一つです。これまで祖父と会う機会があるたびに様々な事を学んできました。魚や物事に対する考えは祖父に強く影響されてきたことは間違いありません。
思い出を残してくれた魚とは丁寧に接する。スポーツフィッシングを嗜む釣り人にとっては当たり前のことですが、その当たり前ができているか今一度確かめる必要があると考えます。今年も残りわずかですが、釣りへ出かけた際は今日話したことを思い出して魚と接するようにしたいです。
先ほど述べた事ですが、外来種のリリースを禁止している場所もあります。ルールは守りながら釣りをしましょう。
<泉 陽登/TSURINEWSライター>