「魚たちは寝るのか?」根本的な疑問がある。答えはもちろん、寝る。しかし人間とは姿かたちも棲む場所も異なるので、就寝事情も違う。そもそも彼らには瞼がないので、目を閉じることがない――。気になる魚たちの睡眠の話について、ここで紹介しておこう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
魚たちの就寝事情
「マグロは寝ない」と言われる。これはどうやら、事実らしい。死ぬまで泳ぎ続ける。代謝がよく、常に酸素を必要とするので、眠らずに酸素を吸って筋肉をつけ、群れで泳ぎ続けるらしい。しかし魚の多くは決してそうではない。大型魚は眠らないのかといえば、沿岸の食物連鎖の頂点に立つシーバスもチヌも、ちゃんと眠る。
ただし冒頭で述べたように、彼ら魚にはおそらくすべて「瞼がない」。そのため、目を閉じることが原則的にできないので、われわれ人間が思うような寝顔にはならない。ではどうやって寝るかといえば、ジッと体を水中で止めて、眠るのだ。外敵の襲来を防ぐため、海底や堤防際で眠ることが多い。
沿岸の消灯は約22時
では、魚は何時くらいに眠るのか?季節と共に体内時計もかわりそうなものだが、およそ22時といわれる。釣っていても22時23時あたりはそろそろ釣れ渋ってくる時間で、やはりこれくらいの時間になると魚は活動を休止するらしい。アジ、メバル、カサゴなどの小魚の活性を見ていると、その証左であるかのように食わなくなる。22時23時には、魚たちはオネムのようである。
なぜ眠るのか――そんなことは眠いから……いや、人間とまったく感覚は違うだろうが、十分に捕食をしてこれ以上食うことも、活動する必要もないからだろう。沿岸の海中の消灯は22時。潮の満ち引きによって、上げ潮にのってベイトが遅くやってくるときには、夜更かしすることもあるかもしれない。
ちなみに起きるのは、日の出前。魚は朝夕2回と、腹を減らせて盛んに捕食する。朝ならば5時~、実際にはその1時間前には目を覚ましているのではないかと思われるが、食ってくるのは夜が明けてからだ。
ベラは砂浜の中で眠る?
特殊な眠り方をする魚もいる。その一例に挙げられるのが、ササノハベラやキュウセンだ。
ベラは外敵から身を守るため、海中の砂の中で眠ることがある。砂を掘って、体を横にして入れるというのだから、まったくけなげでかわいいヤツだ。意地悪して、朝方、干上がった砂浜を掘ると寝坊したベラが出てくることがあるという。サバイバル環境下に置かれたとき、魚を食べたいと思ったら、干潟のベラを掘り起こすといいかもしれない。
魚は「止まって寝る」
コウモリは電線にぶら下がって眠る。鳥は木陰に隠れて眠る。どんな生き物にも、それぞれの眠り方があるらしい。魚には魚の就寝事情がある。物陰に身を潜めて、体をジッとさせて眠るのだ。その際、もちろん海中での姿勢を保つためにヒレを動かし、エラ呼吸も続けるのだろう。人間からしたら瞼もかっ開いているし、「そんなので疲れとれるのかよ」と思ってしまうのだが、まあそれが彼らにとって心なずむ就寝体勢らしい。ちなみに日中、船の影なんかの暗所にいるアジも、どうやら寝ているらしい。
魚が寝る時間を知るのは、大事なことだ。むろん各々が好きな時間に眠るだろうが、多くは群れ単位で就寝時間を迎えると思われる。そう考えると、ド深夜の釣りには、あまり意味がなさそうだ。容易に魚の反応を得ることはできない。
ただ、これがわからないもので、アジなんかは突然深夜に活性が上がったりもすれば、終夜釣れ続けることもある。群れの入れ替わりがあるアジやサバやメバルなどの回遊魚は、実は夜を徹しても狙う価値があるのかもしれない。
<井上海生/TSURINEWSライター>