我が国には実に様々な「巻貝の呼び名」があります。いったいどのように使い分けられているのでしょう。
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高級貝「ツブ」と「バイ」
皆さんは「高級な貝」と聞いたらどのようなものを思い浮かべますか?地域によって差はあるものの、アワビやサザエ、ホタテといった答えが上がってくるでしょう。
しかし、最近ではそこに2つの貝が名を連ねるようになりました。それは「つぶ貝」と「白バイ」。これらはいずれもやや深い海で獲れる巻貝です。
これらの貝が高級になったのは「刺身で美味しい」からだと言われます。コリコリとして甘みがあるその味わいは唯一無二で、大きくなる貝ではあるもののひとつ数千円するのが当たり前になっています。
生物学上は同じもの?
そんなつぶ貝と白バイですが、いずれも標準和名は異なり、前者はおもに「エゾボラ」、後者は「エッチュウバイ」です。
実は標準和名の上でツブという名のものはなく、分類学上はエゾバイ科というグループに属しています。そして白バイや同じように高級な赤バイもまたこのエゾバイ科です。
ツブとバイはわざわざ呼び分けられているために違う貝のように思われがちですが、分類学上は互いに近い存在なのです。加えて流通上も、ある地域ではバイと呼ばれているものが別の地域でツブと呼ばれることがあり、混乱させられます。
「ツブ」「ボラ」「バイ」「ニナ」いったい何が違うの?
ツブやバイと同じように、色々な巻貝の名前に用いられている言葉があります。それは「ボラ」と「ニナ」。
ボラの代表は、笛に加工されることで有名な、南の海に棲む大きな巻貝「ホラガイ」です。仏具である法螺の材料になるためにホラガイと呼ばれるのですが、このホラガイの仲間や、同じように大きな貝類に〇〇ボラという名前がつけられることが多いようです。
一方でニナはカワニナに代表されるように、主に小型の巻貝に付けられることが多いようです。ただしニナは巻貝の古語のひとつであり、見た目や大きさが全く異なるものでも地域によってはニナと呼ばれるものがあって、やはり混乱させられます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>