魚には「ローカル・ネーム」というべきものがある。その地域ごとの呼び方。筆者は関西の釣り人で、たとえば「アラカブ」と言われても最初はピンとこなかった。こっちでは「ガシラ」だ。それ以外は認めない、とまでは言わないが。今回はそんな関西特有の魚の呼び方をいくつか紹介したい。ちょっと紹介しきれないほどあるので、私が実際に耳で聞いた限りにおいて。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
魚を表す大阪弁の世界
魚は地域ごとにいろんな呼び方をする。みなさんの地域でもたとえばウグイをハヤと言ったり、そんなことがないだろうか?ローカル・ネームは、いかに魚がそこで好かれているかを表すものだ。あるいは邪魔者の外道にも憎らしい愛称がつけられる。
私は魚のことが全体的に好きなライトなさかなクンなので、むろん「魚の大阪弁」も愛するものだ。というか大阪弁全体も好きだ。話が逸れるみたいだが、最近は標準語県の人と話すときには開き直って関西弁を遣うようになった。個人的に実は三十代に移住を考えていたが、根っから関西弁遣いを自覚するようになった今では、多分もうここから出られないんだろうなと思う。
さて、「魚を表す関西弁」の話だ。
カサゴ=ガシラ
これが何より有名で、カサゴは「ガシラ」と呼ぶものだ、とまで断言したい。その他の呼び方はちょっと耳に入ってこないところがある。ただ自分は意外にカサゴと言ったりするのだからわからない。
ガシラはしかし全国的に親しまれる言い方でもあるようだ。瀬戸内太平洋だけにあらず、日本海でもガシラ。どうやら東京ではガシラという人が少ないようですが……。
ちなみにこの俗称いや正式名称ガシラは、頭(かしら)が大きいところからガシラらしい。
小魚を愛する魚大阪弁
その他小魚には特に大阪弁のローカル・ネームが与えられている。いかにも「らしい」呼び方が満載だ。
たとえば、メゴチのことは「ガッチョ」と言う人がいる。筆者調べでは泉南のアングラーはみんな言う。マダイの小さなものは「チャリコ」と言ったり、なんだかそちらの方面の隠語みたいでもあるが「チャリ」とも言う。こんなことを言うのもアレですが、卑下するような発音で言われるのが、また関西らしくて良い。
カンパチの仔はシオだ。実用例「今シオ回っとるからな」。「あれチヌやろ?」水面を見て覗き込んで言う人がいれば、チヌは「ばれたな」みたいにするりを身をひるがえして去っていく。そうなのだ、チヌも関西弁かもしれない。
「ハゲ」とはあんまりな言い方だがカワハギのことなので悪しからず。ボラを釣って「こンのボケ鬱陶しい」と言っている人がいたら関西人だ。ちなみにボラの仔を「ハク」というのも関西だけだとか?いや、もっと小さいのを「イナッコ」と呼ぶんだっけ?
出世魚はこう呼ぶ
青物、出世魚。ツバス→ハマチ→メジロ→ブリとなる。たまに誤解されているようだが、この若魚は関西ではヤズとは呼ばないわけです。
しかし今思ったのだが、大阪湾奥名物といえる「タチウオ」にローカル・ネームがないのはどうも、わからない。タチと言う人もいるが、それは一般的な呼称の枠を出ていない。関西のかっこいいおっちゃんアングラーが、何か名前をつけてくれないだろうか?
面白いローカル・ネーム
アラカブ、ガシラ、アカチン、ホゴ、はてはアカメバルと本職を乗っ取るのだからカサゴの変名も面白い。その他ローカル・ネームは多彩なものだ。出世魚一つとっても東京ではワカシ→イナダ→なんだっけ……最後はブリになるのか。本当にこんな呼び方しているのかなと思うくらい関西の耳にはなじまない。東京沖のアングラーである我が兄は故郷の言葉を捨て、これを使っているのだろうか。許さんぞ。
東京では小さい魚を釣っているおばあちゃんが「チコ」と言っていた。沖縄ではあまり釣り人を見なかったが(沿岸には少ないらしい!?)、とんでもない言文一致もしない呼称が溢れていたりするのではないだろうか。書き言葉も持たない魚もいたら、あるいは新種の可能性だってある。
<井上海生/TSURINEWSライター>