きれいな川の上流部に生息する食用魚カジカ。数cm程度の大きさしかない小魚ですが、全国の酒飲みが熱望する存在です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
長野で「カジカ漁」が最盛期
長野県を流れる犀川で今年も「カジカ漁」が行われ、その様子がニュースとなりました。
同河川では例年冬になると、竹を編んだ「うけ」と呼ばれる道具を、石を組んで人工的に狭くした河道にかけてカジカを漁獲する「うけ漁」が実施されています。
カジカは河川の中~上流域に生息する小さな魚で、生態によっていくつかのタイプに分けられています。うけ漁で漁獲されるのは産卵のために川を遡上するタイプのもので、日本海側の広い範囲に生息していますが、近年は河川の環境改変により生息数を減らしているそうです。
海のカジカと川のカジカ
さて「カジカ」と一口に言っても、人によって想像するものが異なっている可能性があります。そもそも小説などの世界では多くの場合、カジカというとその鳴き声の美麗さで知られる「カジカガエル」を指します。
なら「魚のカジカ」といえば齟齬が生まれないかというとそういうわけでもなく、とくに北日本においては、カジカといえば海に生息するカサゴのような見た目の大きな魚を指します。
面白いことに、カジカという魚のグループには、純淡水域にいるものと純海水域にいるもの、生活の中で海と川を行き来するもののすべてがいます。これらは名前が偶然同じわけではなく、分類学的にも同じグループに属しています。
川のカジカが酒飲みに愛されるワケ
川のカジカが大きくても20cm前後にしかならず、大体のものが10cm前後であるのに対し、海のカジカは大きいと70cmほどにまで成長します。この大きさの差ゆえに、食用魚としてのカジカのイメージは海にいるもののほうが遥かに強いです。
しかし、川にいるカジカもまた、通好みの高級食材として広く好まれています。小さなものは唐揚げにすれば香ばしさの中に強い旨味を感じられ、大きなものは塩焼きにすると意外なほどの脂ののりに驚かされます。
そしてそれ以上に素晴らしいのが「骨酒」。小さめのカジカをちょっと焦げ目が付く程度に焼き、湯呑に入れて熱燗を注ぎ入れます。琥珀色になったお酒には香ばしい風味と濃厚な旨味が添加され、まさにごちそうと言える一杯になるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>