日本最大の湖・琵琶湖でもっとも重要な漁獲物である「アユ」が記録的な不漁に襲われています。その影響は全国に及ぶかもしれません。
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琵琶湖のアユが記録的不漁
日本最大の湖である琵琶湖。内水面でもっとも漁業が盛んであるこの湖では、冬から春にかけて、アユの稚魚である「氷魚」が漁獲されます。氷魚は琵琶湖に40箇所ほど設置された「えり」という伝統的な定置網で漁獲され、時期になると各地で飴色に炊かれた氷魚の佃煮が食べられるようになります。
しかし、そんな琵琶湖を代表する漁獲物とも言える「氷魚」が今、歴史的な不漁に襲われています。今年1月に水揚げされた氷魚は平年の3%に過ぎず、2月に入ってからもその傾向は変わっていないと言います。
滋賀県の発表では「記録を始めた2009年以降で最悪の不漁」となっており、漁業者たちからも「ここ半世紀でもっとも酷い」という言葉が出ているそうです。
なぜ不漁に?
この不漁については、実は昨年よりある程度予想はされていました。というのは、昨年琵琶湖周辺が極端な少雨になったためです。
琵琶湖のアユは本湖で生育し、流入河川に遡上して産卵を行い、それが孵って氷魚となり再び琵琶湖に下ります。しかし昨秋の雨不足のせいで川の水量が減ったことにより産卵数が減少することが予想されており、結果として想定通りになってしまったといえます。
一方で、滋賀県が1月に行った調査では、アユの魚群は例年の2割ほどとされており、漁獲量がそれを遥かに下回っていることについては理由ははっきりしていません。漁業者の間では「渇水により琵琶湖の水位が低下し、えり周りの水流が変化して採れなくなってしまったのでは」という話もあるようです。
今年は全国でアユが品薄になるかも
琵琶湖での氷魚の不漁は、琵琶湖周辺地域のみの問題では済まない可能性があります。というのも、いま日本全国のアユの漁獲を支えているのがこの「琵琶湖のアユ」だからです。
実は氷魚という魚は、そのまま食用にされるよりも、全国の河川や湖に放流される「アユ種苗」としての需要のほうが大きくなっています。琵琶湖では10cm超ほどにしか成長しないアユですが、各地の河川に放流されると、在来のアユと変わらないほどのサイズに成長するため、資源量を補う存在として盛んに放流されているのです。
実際のところ、現時点で琵琶湖の各漁協では、全国からのアユ種苗の需要に応えられない状況が続いていると言います。今年は各地でアユが高騰し、庶民の口に入りにくい存在となってしまうかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>