アメリカザリガニよりも大きく、生態系に大きな被害をもたらす特定外来生物「ウチダザリガニ」。各地で駆除が行われている生物ですが、個人的にも「食べて駆除」はオススメです。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
「ウチダザリガニ」駆除イベント
先日、福島県猪苗代町を流れる川で、外来種の大型のザリガニ「ウチダザリガニ」の駆除イベントが実施されました。このウチダザリガニは「特定外来生物」に指定されており、駆除が推奨されている生物です。
イベントでは、1時間ほどで約150匹のウチダザリガニが捕獲されました。捕獲されたザリガニは専門家の指導のもと調理され、参加者にふるまわれました。
猪苗代町などでは今後、この取り組みを観光にも活かしていく予定です。
ウチダザリガニとは
ウチダザリガニはエビ目(十脚目)ザリガニ科に分類される、北米大陸原産の淡水ザリガニの一種です。体長は15cm程度になり、アメリカザリガニと比較してもより大型になります。
体色はやや明るめの焦げ茶色で、ハサミに白い斑点がありよく目立ちます。ハサミを振りかざしたときに、この斑点が手旗信号のように見えるため、英名ではシグナルクレイフィッシュと呼ばれます。
この英名を直訳した「シグナルザリガニ」が種としての和名で、このうち関東地方北部に帰化した個体群をウチダザリガニ、滋賀県の山間部に帰化している個体群をタンカイザリガニと呼んでいます。
高い繁殖力が特徴で貪欲な性質ももち、あらゆる在来種を食害することから特定外来生物に指定され、駆除が行われています。
異名は「湖のロブスター」
そんなウチダザリガニですが、もともとは食用として日本に移入されました。彼らは原産地アメリカではレイクロブスターとも呼ばれており、可食部こそ多くはないものの美味で知られている食材です。
寒冷な水域を好むため、日本では摩周湖、阿寒湖などといった北海道や標高の高い地域の湖に放流され、漁獲されていました。中でも阿寒湖では現在も漁業権が指定されており、漁獲されたウチダザリガニは周辺の飲食店で提供されています。
また上記の猪苗代町のように、駆除と調理を行うイベントが実施される自治体もあり、その食味の良さは折り紙済みといえます。
湖に放流されたウチダザリガニですが、現在では河川の上流域などで定着してしまっている場所も多いです。そういった場所ではアメリカザリガニと同じように簡単な道具で誰でも漁獲することができます。
特定外来生物のため生きたままの移送ができないことから、その場で活け締めにするか加熱調理してしまうなどの処置が必要となりやや手間ではありますが、それを補って余りある美味しさがあります。もし近所で繁殖してしまっているような場所があれば、漁獲して食べてみるのはオススメです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>