誰もが知る高級食材「ズワイガニ」。それが今、北海道の海で獲れすぎて厄介な存在となっているといいます。一体どういうことなのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
北海道の漁業を邪魔する「ズワイガニ」?
いま、北海道南部の日高地方で、とある魚介類が「獲れすぎて」問題になっています。その魚介類とはずばり「ズワイガニ」。
今回問題になっているのは日本で一般的な食用種であるズワイガニやベニズワイガニと近縁の「オオズワイガニ」という種類です。なぜオオズワイガニが獲れすぎることが問題になっているのか。それは彼らがカレイ漁やウニ漁の網にかかり、網に穴をあけてしまうため。本来の獲物がほとんど獲れなくなってしまっており、甚大な漁業被害を出しているのです。
北海道では日高管区の漁協に特別採捕許可を出し、獲れたカニの商品化を目指しています。実際に一部の直売所などでは販売が始まっており、購入者が行列を作るところもあるそうです。
オオズワイガニ
オオズワイガニはズワイガニ非常によく似ていますが、比べると甲羅がやや横に長く茶色みが強いのが特徴です。
足がやや太くて寸詰まりであり、シルエットが全体的にがっちりしているのがその名前の由来のようです。
一番はっきりと違うのは口で、カニの正面から口を見たときズワイガニの口は上辺がまっすぐなのに対し、オオズワイガニは上辺がM字を描きます。ただし全体としてはよく似ており、むき身で流通すると判別は不可能です。
別の産地のものは高級品だけど
このオオズワイガニ、実はすでに国内で少なくない量が流通しています。ロシアからの輸入ものが多いようで、バルダイという名前で流通するほか、法的にはグレーですがズワイガニとして売られることもあるようです。
オオズワイガニはズワイガニの偽物として扱われることもありますが、実は味がよく、特にとれたてを茹でて冷凍したものは、本家と比べても味に引けを取りません。
ただし、なぜか現在日本で採れるものはほとんどが小型で、商品価値がかなり低くなってしまっています。今回北海道で大量に獲れているものも、そのほとんどが一般的なズワイガニの採取可能サイズ下限である8cmに満たないサイズだそうで、せっかくのズワイガニなのに1匹150~200円という破格で売られているといいます。
今後も大量に漁獲されるなら加工のルートも開拓されるでしょうが、現在のように子ガニサイズを大量に水揚げしていては、新たな資源として定着する可能性もあまりないでしょう。そのため今後もわが国では「厄介で邪魔なカニ」として扱われて終わりかもしれません。カニ好きとしてはもどかしいですが・・。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>