釣りをしているといろいろなことを体験するが、今回は私が沖堤防のノマセ釣りで味わった苦い経験を紹介したい。実際、この経験を繰り返すのが怖くて、釣行の際は道具を念入りにチェックするようになった。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)
沖堤防でノマセ釣り
沖防波堤で青物到来のニュースを聞きつけて、ノマセ釣りで青物をゲットしようといざ出陣!深夜未明の出船も何のその。意気揚々と車を走らせ、通い慣れた渡船店の乗船場に到着し、始発便に乗り込んで波止に渡ると、まずはエサの活きアジをゲットしようとサビキ釣りのタックルを準備。
残暑厳しき折、釣った活きアジはエアポンプに頼るよりも、スカリバケツに入れて海中に沈めて活かしておくが得策と、ロープで結んだスカリバケツも脇に備えて準備万端。夜も明けないうちからサビキ釣りをスタート。
晩夏とあって、まだまだ豆アジ主体でノマセ釣りに使えそうなサイズの活きアジは易々とは手に入らない。そんな中でもポツリ、ポツリと釣れてくるアジの中から、少しでもマシなサイズを選りすぐってスカリバケツの中へ入れては海中に沈めての動作を繰り返す。
ノマセ釣り開始と思いきや……
活きアジの群れが遠のいた朝7時過ぎだっただろうか。アジ釣りのまきエサのアミエビも使い切ったところで、何とか10匹近くの活きアジは確保できた。そろそろ本命のノマセ釣りに転じようとタックルを総換えし、タモ網もセッティングして準備完了。
時は来た!とスカリバケツをつないだロープに手を掛け、海中から引き上げようとした2たぐり目。手の重みの感触は突然フッと抜け落ちて、波止の上に上がったのはロープの先にちぎれたスイベルの切れ端……これぞ正に「拍子抜け」。苦労してキープしておいた活きアジは?スカリバケツは?
いったい何が起こったのか?
要するに、スカリバケツとロープとのジョイント部分のスイベルが、海水の塩分と経年劣化でちぎれてしまい、その先にあったスカリバケツごと、虎の子の活きアジは海底に消えてしまったのであった。ノマセ釣りにかわる釣りもできず、呆然と立ち尽くすも、後の祭り。
日差しは暑いが心はお寒い……
活きアジがなければノマセ釣りは始まらない。キャストを繰り返すルアーマン達の姿を、何もできずに見ているばかり。するとハマチやサゴシが釣れ始め、あちこちで歓声があがり、波止上はますますヒートアップ。残暑の日差しも暑いが、私の心はお寒いことこの上ない。釣りをせずに、ただ防波堤の上にいるだけの時間は、まあなんと長かったことか……。
ようやく9時半の迎え便に乗り込み、乗船場に戻ると、船長とは目も合わさずに、そそくさと退出。スカリバケツを失った時のロープは、今も海水バケツに結んで使っているが、ロープの先のちぎれたスイベルの残骸を見るたびに、あの時の悪夢が蘇ってくる。釣りって何が起こるかわからないから、怖いですね(自嘲)。
<伴野慶幸/TSURINEWSライター>