惣菜魚として根強い人気を誇りつつも、意外と素性を知らない「ギンダラ」。「要はタラでしょ?」と思っている方も多いですが、味の特徴はタラとはまさに正反対と言えるものです。
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混同しがちな「銀鱈と鱈」
今の時期、スーパーの鮮魚コーナーに行くと、「鱈」の切り身と並んで「銀鱈の切り身」が売られているのをよく見かけます。
価格こそ「銀鱈」のほうがやや高いですが、いずれも白く濁った身質や灰色がかった皮など似通った外見をしています。調理方法も「鍋物」や「つけ焼き」など共通するものが多いため、混同している人も少なくないようです。
しかし、この2つの魚は、実際は種も味も全く違う魚です。
銀鱈は鱈ではない
銀鱈の正式和名はギンダラで、カサゴ目ギンダラ科に属する魚。タラと名がつくものの、タラ目タラ科に属するマダラやスケトウダラとは縁遠い魚です。ギンダラもタラと同じく深い海に生息しており、身質が似ているためにこのような名前がつきましたが、種としてはむしろホッケに近いということができます。小田原周辺で珍重され、「全身大トロ魚」とも呼ばれるアブラボウズとも近縁です。
北海道噴火湾以北からアリューシャン列島、アメリカ・カリフォルニア州沿岸までの寒い海域に分布し、水深300~2,000mから漁獲されます。特にアラスカからカナダの沖合に多く棲息しており、近年はカナダからの冷凍での輸入が多くなっています。
かつては安い惣菜魚でしたが、近年日本人の脂志向の強まりとともに需要が高まっており、価格も向上の一途をたどっています。姿形のよく似たマジェランアイナメ(日本ではメロという名称が一般的)が代用品として用いられることも増えているようです。
最大の違いは「脂」
切り身の見た目こそ多少似ているタラとギンダラですが、味の特徴はむしろ真逆。さっぱりとして良い出汁が出ることが魅力のタラに対し、ギンダラの身上はずばり、その濃厚で非常に強い脂でしょう。
ギンダラを素材に使うと、その脂が料理全体に回るので、汁物や鍋物にコクを出したいときに使うと非常に良いです。一方でさっぱりと食べたいときや、バターやオリーブオイルなどの脂質を使った料理にギンダラを使ってしまうと、ちょっとくどくなりすぎてしまいます。