新型コロナウイルスの影響による「野生動物食用禁止宣言」や、長江での大規模な禁漁の影響を受け、中国では海水魚の消費量が増大すると考えられています。我々の食生活にも影響は出るでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhoteAC)
価格高騰が予想される大衆魚
上記のような乱獲合戦が行われているわけではない魚種でも、値上がりが予測される魚種があります。
タチウオ
すでに中国国内で人気の高い魚たちは、経済力向上に伴う需要増加によって日本からの輸入が増加し、日本における魚価もあがる可能性も十分に考えられます。そのような魚の代表がタチウオ。
タチウオは中国でも人気の魚で、その細長い外見が「永遠」「永久」を連想させる縁起の良い魚ということで、春節などの祝賀時に需要が増えるといいます。タチウオはすでに韓国における需要が高く、日本で1番の漁獲高を誇る和歌山県有田市では、漁獲の8割は韓国に輸出されているそうです。今後は中国に向けた輸出も盛んになるかもしれません。
サケ
またサケも同様に需要増による価格向上が考えられます。
中国ではサケは一般的に用いられる魚でありながら魚価が高く、高級品として扱われています。2006年時点では国内での生産量375tに対し輸入量は1万tにも及び、今後も増加が見込まれています。(『平成19年度農林水産物貿易円滑化推進事業のうち品目別市場実態調査(結果)』2007)
日本からの輸出もすでに盛んに行われており、今後も増えていくことが予想されます。
高級魚も今後は輸出メインに?
数年前、年始恒例のクロマグロ初競りで、香港の水産業者が日本の寿司店運営会社に競り勝ったというニュースが話題になりました。経済力向上に伴い、高級魚に対してもその購買力が発揮される例が増えていくと見込まれています。
農林水産省における中国の市場実態調査によると、現時点で人気のある日本の水産物はサバ、サンマなどですが、今後はマグロ、タイ、カンパチ、ブリなどの高級魚の需要も増大していくとみられているそうです。(『平成19年度農林水産物貿易円滑化推進事業のうち品目別市場実態調査(結果)』2007)
寿司や刺身などの日本食ブームもこれに拍車をかける形になると思われます。
国境を超えた協力体制が必要
我々日本人は古くから魚を食べ、魚食文化を発達させてきました。そのため海外の影響で魚価が高騰したり漁獲が減ったりすると、ついその国を責めたくなってしまいます。
しかしサンマ、サバについては日本の漁業者による乱獲、幼魚まで獲ってしまう漁法などにも、国際的な避難が寄せられています。回遊性の高い魚については、それを漁獲するあらゆる国が協力していかないと資源を守ることができません。
美味しい魚をいつまでも適正な価格で食べていくために、国境を超えた協力関係と乱獲への断固とした対応を、継続して行っていく必要があるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>