お祭りといえば「キンギョ(金魚)すくい」を思い浮かべる人も少なくないはず。キンギョは、日本の魚と思われがちですが、実は立派な外来魚の仲間です。今回は「キンギョは何しに日本へ?」をお届けしていきます。
(アイキャッチ画像出展:pixabay)
日本に持ち込まれた理由
キンギョが日本に運ばれてきたのは、今から500年前の室町時代の頃だと言われています。明(みん:当時の中国王朝)から大阪の堺に初めてやってきましたが、当時は養殖技術がなかったため、日本には定着しませんでした。
しかし、江戸時代に再び持ち込まれ、最初は武家や公家をはじめとした特権階級だけが楽しめる贅沢品でした。
時代が進むにつれ、養殖技術も発展し、江戸中期にはメダカとともに庶民の愛玩物として広まりました。この頃から、キンギョ売りやキンギョすくいなどの文化が確立され、現在でもこの文化が続いています。
漢字だとなぜ「金魚」と書くのか
中国ではキンギョのことを「チュンユイ」と呼びますが、この発音が“金が有り余ること”を意味する『金余(チュンユイ)』と同じ発音をしています。
それが日本にも伝わり、【チュンユイ→金余→きんよ→きんぎょ→金魚】となったと考えられています。
野生化するとどうなるのか
のどかでゆったりとした雰囲気を持つキンギョですが、飼育が難しくなり川に放流してしまうと、思ってもみないような深刻な問題を引き起こします。
日本では海外程問題にはなってはいませんが、野生化したキンギョが巨大化して生態系に大打撃を与えてしまっている地域もあるようです。
アメリカのカリフォルニア州のタホー湖では、2013年にキンギョが巨大化して大繁殖してしまった事例があります。
その時に発見されたキンギョの体長は50cm以上、体重は2kg近くもあるまさにモンスターだったとか。しかもそれが何百と群がって生息していたというのです。
もともと驚異的な生命力を持つキンギョは、水さえあればどんな場所でも大抵生き残れるため、天敵がいない環境では、恐ろしいスピードで成長し繁殖してしまいます。
病気の原因にも
また、なんとなく想像がつくと思いますが、キンギョは非常に食欲旺盛です。この食欲が驚異的な成長スピードを生んでいるのです。
大食いのキンギョが大量に繁殖してしまうと、その分、泄物物の量も比例して増えるため、水質がどんどん悪化してしまいます。そのため、自然にはもともとなかったキンギョヘルペスなどの病原菌を広めてしまうこともあったようです。
遺伝的汚染も
日本のキンギョの場合、外来魚で有名なブラックバスやブルーギルのようにその地に生息する在来種を食べ尽くして、直接的に生態系を変えてしまうようなことはないと思いますが、近年では遺伝的汚染が問題となっています。
前述のようにキンギョはフナと近縁のため、野生化してしまうと、国内固有種のフナと交配してしまう可能性があります。
そうすると、純粋な固有種の遺伝子が汚染され、種の存続が危うくなってしまいます。現地にフナが生息し続けたとしても、キンギョの遺伝子が混ざってしまうと、種の保存という観点で、固有種が絶滅したことと同意になってしまうのです。
観賞魚として楽しむならルールを守る
キンギョはメダカに並んで、観賞魚として広く愛されています。長く生きるものは10年以上、長いと15年を超えることもあります。
生き物を飼い始めるときはワクワクと気持ちが高揚しているかと思いますが、飼い始める前に、どれくらいの大きさになるのか、その生き物がどれくらい生きるのかなどは最低限知っておくようにしましょう。
キンギョなら大丈夫だろうと軽視してはいけません。飼い主としてしっかりと責任を持って飼育するようにしてください。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>