志摩沖にトンボがやってきた。トンボとは、正式和名ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)と呼ばれる小型マグロのことである。回転寿司でよく見かけるビントロは、このマグロである。マグロがジギングで狙えるとあって、ブームとなりつつある三重県の志摩へ12月28日に出撃。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・田中耕二)
トロ丸でトンボジギング
12月28日未明の港は、マグロを求める漢たちの活気で満ちていた。期待と不安を満船にしてトロ丸は静かに志摩沖を目指した。当日のタックルは、PEライン3号、リーダーナイロン80lbをメインとして、少しライトなPEライン2.5号と強靭なPEライン4号タックルを用意した。
1時間ほど走ってポイントへ到着。マグロ狙いといえば遥かな大海原を思い浮かべるかもしれないが、意外と近い。志摩半島がはっきりと見えており、辺りには鳥が飛び交い、雰囲気は抜群。
ポイントには、強烈な北西風が吹き付けており、この風がキモになる。水深は500m前後のため、ストラクチャーになるようなものはない。とうとうと流れる潮筋を流すドテラジギングなので、風が強い方が広範囲に探れる。また、風が海面を動かすことで海中にも潮目ができやすいように感じている。
右舷に9人が並び胴の間からトンジギ(トンボジギング)スタート。まずは、PEライン3号のタックルにウロコジグ200g、フックは幻2/0をフロントにセットして第1投。
魚探を見る船長から50mと90mに潮目があるとアナウンスがあるので、60m沈めてワンピッチで様子を見る。調子がいいと一流し目から次々とロッドがブチ曲がるが、そうは「トン屋」が卸さない。
ルアーがある水深をイメージする
ドテラ流しで斜めになっていくラインを三平方の定理で計算して、狙う水深でジャーク&フォール。60mから40mまで探ったら、次はジグを100mまで沈めてジャーク&フォール。
100mの水深を探るために150mのラインを送る。ライン角度が45度ぐらいなので…。ここからワンピッチで50mを回収し、また20mほど沈めて50mを回収する。
イメージでは、水深50mを探って、そこから100~70mを探り、3回目は80~60mを探る感じでジャーク&フォール。基本は、1ピッチ1ジャークだが、2ピッチにしたりハーフピッチを入れたり。海中の潮目に差し掛かるとジグが重くなったりするので、その水深は念入りに探りを入れる。
基本は「修行の釣り」
この釣りを、船長たちは「基本的に修行の釣り」と表現する。というのも、何もアタらないからだ。マグロ以外では、シイラとカツオくらいだろうか。通常のジギングのように「ボトムタッチしてシャクったら根魚がヒットしていた」といったうれしいハプニングはない。
黙々とジグをシャクり続け、自分のジグが水深何mにあるのか想像する。そのジグにマグロが襲い掛かるシーンを妄想する・・・(笑)。バイトがなくてもジグをシャクり続ける精神力と体力、そしてなによりも筋力が必要だ。釣友の木村さんは、「釣れないね~」とぼやき始めたが、そういう釣りなんです・・・(笑)。
開始して1時間ぐらい経ったころ、無線でヒットが伝えられた。水深50mでヒットがあったようだ。次も僚船で、今度は80mとのことだったが、我が船にトンボは微笑まず。
2時間経って、マグロジギング初挑戦の木村さんは休憩に・・・。私は、気分転換も兼ねてPEライン2.5号のタックルにチェンジ。ジグを「あいや~ジグ」のロング180gに換装し、前後にフックをセットした。フロントにシングルフックのみが基本だが、前後にフックをセットすることでヒット率は上げられる。特にフリーフォールに反応する場合はリアフックが有効なのだ。
タックルチェンジでカツオ!
タックルチェンジして1投目。群青の海に吸い込まれるジグを見ていると、「40mに反応」とアナウンス。40mで軽くイレギュラーを入れてやると、ポンッと止まった。すかさずフッキング。グッと重みが乗ったので、そのまま巻きアワセを入れてグイグイと上げてくる。少し走る気配を見せたが素直に浮いてくる。ビリビリと震える感触は、カツオかもとドラグを少し緩めた。
水中深くフラッシュブルーに輝く魚体はやはりカツオ!行くと思った瞬間にドラグ音を響かせて海中深く潜っていく。無理やり止めるとラインブレイクや身切れしてしまう原因になるので、ドラグ任せに走らせ、30mもラインを出された。再び浮かせてくると丸々とした4kgクラスのカツオ。2回ほど走らせて無事にキャッチ。
1匹の魚が船上を活気づかせる。ヒットしたパターンを説明して続けると、フォール中のジグにビリビリとバイト。フッキングしたのだが、スカッ。悔やみながら5m速巻きしてフォールを入れると、ピタッ。
今度は、しっかりとフッキングして取り込んだのは、一回り大きい4.2kg(エラワタ抜き後に計量)のカツオ。もうニコニコだ。まだバイトのない木村さんにヒットタックルを託して、余裕のブランチタイム。
13.5kgのマグロ登場!
後半戦、チョロコー230gでアプローチ。タチウオパターンを意識したジグだが、スライドやフォールはマグロにも効きそうだ。海中の潮目は50m前後と100m前後にあることが多く、それにベイト反応が入るタイミングがチャンス。
110mに本命らしき反応とアナウンスがあったと同時にトモでバイト。ロッドがブチ曲がっているところを見るとトンボだろう。ヒットは80m付近と聞いたので、100m付近にあったジグをワンピッチで引き上げてくるとドンッ。連鎖ヒット!!
少しドラグが滑ったが、すぐに止まり重々しい引き。間違いなくトンボだ。10kgは超えているかと思いながらグイグイ上げてくる。
タックルは、PEライン3号にリーダー80lb、フックは幻の2/0。30kg超のタネトン(志摩では大型のビンナガをタネトンと呼ぶ)を狙ったタックルなので、不安は全くない。重量級の引きを楽しんで13.5kg(エラワタ抜き後に計量)のトンボゲット。日本刀のような胸ビレがなんともカッコイイ。
群れに当たれば船中祭りに
このタイミングで祭りに突入。ダブルキャッチの直後にダブルヒット、そしてダブルキャッチと船上に10kg超のトンボが4匹転がった。
木村さんは、祭りに参加できずに焦っていたが、次の祭りでヒット。初めてのトンボの引きを堪能して無事にゲット。このタイミングはなんとフィフスヒットのフォースキャッチ。私は、木村さんがヒットした時点でジグを回収していた。
ヒットしなかったアングラーもお祭りしていたりしたので、まともにジャークしていたアングラーは、全員ヒットしたのではないか。とんでもない状態である。
考えてもらいたい10kgを軽く超えるマグロがダブル、トリプル、フォース、フィフスでヒットしてくるのだ。そこはもうアングラーズ天国。そうトンボジギング、略してトンジギは天竺への修行…。志摩の釣船の船長さんは本当にそう呼んでいます…(笑)。