深海魚といえば、チョウチンアンコウを想像する人も多いのではないでしょうか。彼らは頭のてっぺんに提灯(ちょうちん)をつけていて、それを使って狩りをするのだとか。ちょっと変わった生態を解説していきます。
(アイキャッチ画像提供:Pixabay)
チョウチンアンコウの容姿
まず最初に、チョウチンアンコウと言われてみなさんが想像する魚の姿はおそらく、茶色っぽいグデっとした体と、下顎がしゃくれたちょっとこわーい顔、そしてピカピカと光る提灯(ちょうちん)が頭についているものではないでしょうか?
皆さんが想像した魚はチョウチンアンコウで間違いありません。しかし、その魚は全てチョウチンアンコウのメスであり、オスは別の姿をしています。
メスの全長は40~50cm程度に対し、オスは極端に小さく、わずか5cmほどしかありません。
姿も細長く、見た目からは同じ魚とは思えないくらいです。しかし、その明確な姿の記録はまだなく、どのようにして泳ぐのか、どのような生態なのかは未だに不明のようです。
チョウチンアンコウが生息しているのは水深200-800mの深海で、水揚げされることがほとんどなく、まだまだ解明されていない謎の多い魚です。
最大の特徴『チョウチン』
チョウチンアンコウの最大の特徴は、頭から生えている提灯(ちょうちん)ですよね。
構造
その構造について解説していきます。まず、この提灯は大きく3つのパーツに別れています。
1つ目は「誘引突起(イリシウム)」と呼ばれる触手のようなもの。
2つ目は誘引突起の先端の膨隆した「擬餌状体(エスカ)」と呼ばれる器官。
3つ目はエスカの中心に存在し、光を発する「発光器」に分かれています。
この3つの要素で提灯はできています。
使い方
アンコウの仲間の多くは誘引突起(イリシウム)を持っています。イリシウムは背びれの1番先頭のトゲが変形したものです。
イシリウムの先端に存在する擬餌状体(エスカ)には10本の糸状の組織が存在し、この部分を水中で漂わせることで、小魚や、小さい生物に見立てています。
彼らはこのイシリウムを巧みに操り、釣り竿かのごとくエスカを動かして、エサとなる生き物をおびき寄せ、エスカに誘われてフラーっと魚が自分の前を通ると、大きな口で丸飲みにして捕食します。また、特にチョウチンアンコウの仲間は、更にこのエスカの先端に発光器を有し、その部分を光らせることができます。
真っ暗な深海で、ピカピカしたものがヒラヒラと動いていたら、目的がなくとも近づいて行ってしまう気持ちはなんとなく理解できますね。
発光の方法
チョウチンアンコウがどのようにしてエスカを発光させているのか。
チョウチンアンコウが光る物質を分泌している?あるいはソーラーパネルのように太陽光を貯蓄して光らせている?
いいえ、違います。
実は光っているのは、チョウチンアンコウ自身ではなく、発光器に共生させている発光バクテリアたちなのです。
エスカの膨らみの中心はバクテリアの培養室になっており、発光バクテリアを共生させています。
培養室の上部は半透明になっており、あたかも提灯自体が光っているように見えるのです。また、培養室には細い開口部があり、ここから発光バクテリアを噴出させることもできます。
光ファイバー同様の器官
チョウチンアンコウ類のエスカは他のものと違い、エスカから出ている糸状の組織は光ファイバーと同じような構造をしています。
糸状の組織は中心が透明になっており、培養室の発光バクテリアの光を先端の発光器まで届けているのです。
独自に進化を遂げた器官が、人間が何年も掛けて作り出した技術と同様の構造をしているなんて、驚きですね!