深海魚といえば、チョウチンアンコウを想像する人も多いのではないでしょうか。彼らは頭のてっぺんに提灯(ちょうちん)をつけていて、それを使って狩りをするのだとか。ちょっと変わった生態を解説していきます。
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チョウチンアンコウの生殖行動
魚たちは種類によって様々な方法で繁殖を行いますが、中でも深海に生息しているチョウチンアンコウの仲間のうち、いくつかの種類は、かなり変わった生殖行動を行います。
オスとメスの出会い方
真っ暗な深海では、簡単にオスとメスが出会うことができません。では、どのようにしてお互いを見つけるのでしょうか。
ここで頑張るのがオスです。
オスはメスから発せられる特異的なフェロモンを嗅ぎ分け、それをたどってメスを見つけます。
そしてメスに出会ったオスは驚きの行動をします。
オスがメスに吸収?
なんとオスは見つけたメスの腹部に噛み付き、離れなくなるのです。
「まぁ、そういう愛の形もあるよね」と、少数派の意見もあるかと思いますが、この後が驚くなかれ。
なんとそのまますこしずつオスは吸収されていき、最終的にはオスとメスは一体化してしまうのです。
オスとメスの体が完全につながると、栄養供給もメスに完全に依存するようになり、時間が経つにつれ、オスの目や内臓は退化していき、最終的には生殖器のみを残して全て吸収されてしまいます。
そして、心も体も完全に一体となったメスの個体は、自力で繁殖を行えるようになるのです。
深海だからこその理由
なんでそんなことに…
そう思う方もいるかもせれませんが、これは深海だからこその繁殖方法だと言われています。
広大な海の中で、且つ真っ暗な世界での恋愛となると相手を探すのも一苦労なのは容易に想像できます。
やっと同種に出会っても同じ性別では繁殖を行えません。苦労して見つけたパートナーを離さない!
その決意からの進化だったのではないでしょうか。
一度の出会いを大切にしているチョウチンアンコウの仲間は、真の一期一会を知っている唯一の生き物なのかもしれません。
まだまだ謎ばかり
チョウチンアンコウの生態はまだまだ謎が多く、解明されていないことがほとんどです。
生きている状態で発見されることも少なく、特にオスは未だに発見されたことがないそうです。
海の中には、私達の知らないロマンがまだまだたくさん溢れていて、今後の発見がますます楽しみですね!
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>