お寿司のネタでも人気のタコ。軟体動物の代表格で8本の足を持ち、墨を吐いたり、大きな吸盤を持つことで有名な生き物です。今回は謎の生物『タコ』の持つ特殊能力を紹介します。
目次
1,タコの『墨』は煙幕
タコと言えば口から噴射するタコ墨が印象的ですよね。
タコ以外にも同じ軟体動物のイカも墨を吐きますが、タコの墨はイカのものとは使用する目的が異なります。
イカ墨との違いは?
両者とも天敵の生物から逃げる際に使用しますが、イカの墨は粘度が高く、吐いた瞬間に細長い墨の塊になります。
これは、イカ自身が分身したように見せて相手をかく乱するためだと言われています。
反対にタコの吐く墨は粘度が低く、吐いた瞬間に一面にブワッと広がります。
忍者が使う煙幕のような使い方です。
相手の視界が悪くなっている間に逃げてしまうのです。
タコ墨の料理があまりない理由
イカ墨を使った料理と言えば、イカ墨パスタやイカ墨を使ったパエリアなど、日本風にアレンジしたイタリア料理でよく見かけますが、タコ墨の料理はあまり見たことがありません。
これは前述の墨の粘度が大きく関係しています。
粘度の高いイカ墨は具材によく絡み、味がなじみやすいのに対し、タコ墨はサラッとしているためあまり料理には向いていません。
また、タコの墨袋は、イカと比べて、奥まったところに位置しており捌くのに手間が掛かると言われています。
また、1匹から取れる墨の量もイカの半分程度で、手間や時間から考えた際にあまりコストパフォーマンスがよくないことも原因の一つのようです。
2,一瞬で背景に溶け込む『擬態』能力
タコは岩場や海藻の多い地域に生息していることが多く、体を様々な色に変化させて、捕食や、逃避行動に役立てています。
中でも「ミミックオクトパス」というタコは擬態の達人と呼ばれています。
【ミミック = 真似る・似せる】という言葉からも、ミミックオクトパスが擬態の達人であることがうかがえます。
普通のタコは自分の周りの背景や景色に似た色に変化します。しかし、このミミックオクトパスは背景に近い色ではなく、生き物を真似ることができます。
真似をすることができる生き物は約10種類。
ミノカサゴやヒラメ、ウミヘビなどの真似をすることもできるそうです。
その能力の高さはダントツでかなり再現度が高いです。どこでその知識を得たのか非常に興味がありますが、詳しいことはまだ明かされいないそうです。
どのように色を変えるのか
タコは非常に目が良い生き物と言われています。
しかし、色彩の区別はできないとされ、白と黒の違いではなく、明度の違いで色形を判断しているのです。
目に入ってきた明度の違いを判断し、皮膚の色と凹凸を一瞬で変化させています。
では、どのようにして皮膚を変化させるのでしょうか。
イカやタコは色素胞と呼ばれる器官をもっています。
タコの腕1本には5000万もの神経が走っており、色々な方向に筋肉を動かすことで、この色素胞を収縮したり、弛緩したりすることによって、色素を集めたり、広げたりして体の色を変えています。
また、皮膚は3段構造になっており、1番上が色素保有細胞、2番目が虹色素胞、3番目が白色素胞に分かれています。
1番目の色素保有細胞が様々な色を、2番目の虹色素胞は周囲の色を真似る色、3番目の白色素胞は色の発色が良くなるための下地の色を作っています。
これの要素を掛け合わせることによって、様々な色を表現し、あらゆる背景に溶け込むことを可能にしています。
3,タコは『心臓』を3つ持つ?
タコは人間と違い心臓を3つ持っています。
心臓にはそれぞれに役割があり、ひとつはメインと言える「心臓」です。人間の心臓と同じように、全身に血液や酸素を送る役割をしています。
残りのふたつは「鰓(エラ)心臓」と呼ばれ、左右の鰓にひとつずつ存在しています。
鰓には血液を、筋肉には酸素を送るための役割があるそうです。
どうして鰓にも心臓があるのか
同じ海の生物にも鰓はついていますが、なぜタコには鰓にも心臓が必要なのでしょうか。
それには前述の『擬態』の能力が深く関係しています。
擬態の能力を使うには全身の筋肉を収縮、弛緩させて筋肉を機敏に動かす必要があります。
その行動には大量の酸素を必要とします。
そのため心臓が3つでき、体中に酸素を十分に巡らせることが可能になり、複雑な擬態が可能になったと言われています。
4,人間を殺せるほどの『毒』を持つ
私たちの食卓に並ぶタコは「マダコ」と呼ばれる種類のタコですが、タコの中には簡単に人を殺すことができる猛毒を持っている種類のものもいます。
そのタコの名は【ヒョウモンダコ】。
ヒョウモンダコは体長12cmほどの小型のタコです。しかし小さいからと侮ってはいけません。
唾液にフグと同じテトロドトキシンという猛毒を持っています。
このテトロドトキシンがどれくらの猛毒かというとは、同量の青酸カリの500倍から1000倍の毒性があり、わずか2〜3ミリグラムの摂取で死に至るほどなのです。
青い輪のような模様が全身を覆っていることから「ヒョウモンダコ」という和名がついています。
このタコの厄介なところは、テトロドトキシンが唾液腺だけでなく、筋肉や表皮にも存在して言うところです。
少し不気味ではありますが、見た目は鮮やかなので、間違って触ってしまわないように気を付けましょう。
タコは忍者そのもの!
いかがだったでしょうか。
墨を使った煙幕や、姿をくらます擬態、一撃必殺の毒などはまさしく忍者そのもの。
人間は心臓を3つも持ってはいませんが、忍者が長時間走っている姿もなんとなく想像できます。
タコこそが現代を生きる忍者なのかもしれません。
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>
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