水槽を彩る美しい水草たち。しかしひとたび野外に出れば、それは恐ろしいテロリストへと変わってしまいます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「園芸スイレン」の一斉駆除が実施される
今月初頭、愛知県名古屋市の池でとある厄介な水草の駆除が実施されました。その水草とは「園芸スイレン」。
園芸スイレンとはその名の通り園芸種のスイレンで、日本に在来分布しているスイレンの一種「ヒツジグサ」と比べはるかに大きく美しい花を咲かせます。
園芸スイレン(提供:PhotoAC)そのためかねてから全国各地の池に植えられてきましたが、実はこれが大変厄介な存在。丈夫で枯れにくく、葉の大きい園芸スイレンが池や沼などの水面をすっぽりと覆ってしまい、在来生物たちが暮らせない環境になってしまうのです。
園芸スイレンの駆除は全国各地で実施されており、中には北海道・知床半島の知床五湖のような世界遺産に指定されて保護されているような地域でも問題になっています。1株からでも定着してしまうので、仮に綺麗で好きな草だったとしても、池にまくような真似は絶対にしてはいけません。
「ホテイアオイ」が溜池を埋め尽くす
この園芸スイレン同様に、在来環境に致命的な悪影響をもたらす水草は他にもあります。その代表がホテイアオイ。
ホテイアオイと言えば金魚鉢に浮いている草として知られており、浮袋をつけたユーモラスな形状でとても人気のある水草です。しかし一度逸出すれば非常に大きく成長し、時に茎の長さが数十センチにも達します。
ホテイアオイ(提供:PhotoAC)そのように大きく成長したホテイアオイはどんどん株分かれし、あっという間にため池や沼の水面を覆ってしまいます。そうなると光や酸素が水中に届きにくくなり、他の生物が生きていくことができないような環境になってしまうのです。
このホテイアオイ、しばしばもともといなかったはずの環境から見つかっており、どうも心ない人によってわざと投入されているようです。こうなってくるとまさに「環境テロリスト」であると言わざるを得ません。
「オオカナダモ」を捨てちゃだめ
このような園芸スイレンあるいはホテイアオイよりも、もっと全国の水辺に定着してしまっている厄介水草があります。その代表がオオカナダモ。
オオカナダモの繁る水路(提供:PhotoAC)オオカナダモは名前に反して南アメリカ原産の水草で、日本に在来分布しているクロモという水草を大きくしたような形状です。こちらも繁殖力が高く、1株でも逸出すればあっという間に大群落をなし、在来のクロモやその他の水生生物たちを駆逐してしまいます。
今回ご紹介した3種の水草はいずれも特定外来生物には指定されておらず、今でも市販されています。しかし一度野外に逸出すればその水域の環境を激変させてしまうリスクがあり、非常に危険な存在です。各地で多大な予算をかけて駆除が行われている現状を鑑みれば、個人的には市販もすべきではないと考えますが、いかがでしょうか。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

