とても深い海の底に暮らす、数百年も生きるという謎のサメ。食べたらいったいどんな味がするのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
400年生きるサメ
突然ですが、地球上でもっとも「長生き」な生き物って何かご存じでしょうか。
ゾウガメ?(提供:PhotoAC)ある程度下等な生物であれば長く存在し続けることは可能ですが、我々ヒトが含まれる「脊椎動物」となるとやはりある程度の長さで寿命が尽きてしまいます。長命で有名なものといえばゾウカメですが、どれだけ長生きでも200年生きることはできないといわれています。
しかし実は脊椎動物にも、数百年以上の寿命を誇るものがいます。それはオンデンザメ。「隠田鮫」という名前のこのサメは、あらゆる人の目から逃れたような深い海に生息し、ときに400年も生きることがあるといいます。
なぜそんなに長生き?
オンデンザメの特徴は、非常に動きがゆっくりとしていること。深海に落としたカメラで観察された個体は、1分間に数回しか尾びれを動かさなかったそうです。成長も遅く、大きさは5mほどになるサメですが、1年で1cmほどしか成長しないとされています。
このサメに関し、面白い研究内容が発表されています。研究者がオンデンザメの心臓を調べてみたところ、それは「若さを保っている」どころか「もう死んでもおかしくないほど老化していた」のだそうです。
オンデンザメの身(提供:茸本朗)にもかかわらずその個体は捕獲されるまで死の兆候はなかったそうで、この研究結果は多くの人を驚かせました。これまで我々が一般的に考えていた「老化を止め、若さを保てば長生きできる」というのがただの「思い込み」の可能性があるとまでいう人もいます。
食べたらどんな味?
そんな不思議で奇妙なオンデンザメですが、実は食用にする地域があります。それはアイスランド。当地ではこのサメの肉を地中に埋めて熟成させ、わずかに含まれる有毒成分をなくしてから食べているといいます。
サメの身には浸透圧調整のための尿素が大量に含まれていますが、これが熟成中にアンモニアへと変化し、強烈なにおいになります。このようにして作られた伝統料理「ハウカットル」は、食べた人をおののかせる世界屈指の珍味だといわれています。
オンデンザメのムニエル(提供:茸本朗)食べれば長寿になれる?
筆者もかつて知人から譲り受けたオンデンザメの身を調理して食べたことがあります。毒を含むとされているので生食は推奨されず、湯引きやムニエルなどに加工して食べましたが、ムチムチとして弾力がありなかなか美味しいものでした。これを食べれば長寿になれる……のであればありがたいのですが、残念ながら現時点でそのような研究結果は発表されていません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

