いま各地の湖で人知れず進む「海化」。いったいどんな問題があるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
福井のウナギ漁師を悩ませるのは「フジツボ」
福井県の沿岸部にある三方五湖。5つの湖が水路や運河でつながっているのですが、海からの距離や流入河川などの環境が異なるために淡水湖から海水湖までバラエティに富んでおり、唯一無二の環境となっています。
三方湖(提供:PhotoAC)三方五湖のうち最も南にある三方湖では、古くからウナギ漁が盛んにおこなわれてきました。主に筒漁で漁獲されるウナギは脂乗りがよく、江戸時代から名物として知られてきたようです。
しかしそんな三方五湖のウナギ漁で近年、ある生物が悩みの種となっています。それはフジツボです。もともと三方湖には生息しなかったフジツボが近年急増しており、ウナギ漁の筒に大量に付着し、ウナギが入りにくくなったり、筒の重量が増えて引き上げが大変になるといった被害が発生しているのです。
理由は「湖の”海化”」
三方湖は五湖の中で最も海から距離があり、流入河川も多いため、長らく淡水湖として扱われてきました。一方でフジツボは海水の影響を受ける水域にしか生息できないため、三方湖で姿を見ることはなかったのです。
漁具に付着したフジツボ(提供:PhotoAC)それがなぜ三方湖でみられるようになったのか、いろいろな原因があると考えられますが、大きいのは「塩分濃度の上昇」かと思われます。三方五湖の「入り口」である日向湖や久々子湖には常に海水が流入しますが、それが三方湖まで影響を及ぼすようになっているのです。
三方湖が淡水湖から、海水と淡水の混ざった汽水湖に変化してしまうと、これまで長い時間をかけて培われてきた生態系が変化を余儀なくされます。伝統漁として知られ、コイやフナを獲る三方湖名物「たたき漁」も、場合によっては休漁に追い込まれるかもしれません。
各地で起こる汽水湖の破壊とその影響
このような「湖水の塩分濃度上昇」は三方湖だけではなく、各地の湖で発生しています。近年ニュースとなっているのは茨城県の涸沼や、静岡県の浜名湖などがありますが、これらの湖はもともと汽水湖であったものの、海水の流入量が増えて海水湖に近い状態になりつつあるともいわれています。
海水化が進む原因も多岐にわたるとされますが、海洋温暖化が大きな影響をもたらしているという説が一般的です。一般的に物質は温度が上がるほど体積が増加しますが、海水温が上昇することで海水が膨張して海面水位が上昇し、海から湖に海水が「逆流」しやすくなっているのです。
浜名湖の今切口(提供:PhotoAC)これによる経済的な被害も発生しており、涸沼では塩分濃度が上昇することで名物であったシジミの漁獲が減ったとされています。浜名湖でも海水化が進み、アサリやノリの漁獲量が減っているというデータがあります。汽水湖は多くの生き物にとってのゆりかごとなっていますが、今後は大きな変化を余儀なくされるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>



