福井の春イカ狙いで、まさかのドラマが待っていた。ブラックバス一筋の息子が「春のアオリイカを釣ってみたい」とやってきたのは、夕マズメの福井の海。父としてポイントを案内し、信頼のエギを託した直後――ロッドは未体験の弧を描き、上がってきたのは3kg超のモンスターアオリだった。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)
バス釣り師の息子、福井の海へ
「アオリイカを釣りたいんだけど、どこが良い?」ある日、息子からそんな連絡が入った。彼は「ブラックバス中心の生活がしたい」という一念で、わざわざ滋賀県へ移住してしまった筋金入りのバサーだ。今回は彼女を連れて福井へ来るというので、ガイド役を買って出た。
普段からバスフィッシングで鍛えられているだけあって、二人ともロッドさばきやラインメンディングが実に自然で無駄がない。「このレベルなら、運が良ければキロアップくらいは見られるかもしれないな」そんな期待を胸に、私は福井のポイントへ向かった。
バサーの息子とエギング(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)用意したタックルは、私が今季久々に引っ張り出した愛竿「カラマレッティートゥレ 96MH 改」。そこにマイクロウェーブガイドを組み込み、息子へ貸し出した。エギは3人分で30本以上を用意。「エギ王K」「ドロー4 タイブレーカー」「エギ番長XS」など、福井の春イカで実績のあるものを中心に揃えた。
今回の使用エギ(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)藻場の春イカと夕マヅメの勝負
釣りを始めたのは15時前。満潮は17時。風はややあるものの、十分勝負になる状況だった。海を覗くと、濃い藻場の中に大型のアオリイカがペアリングしているのが見える。だが春の親イカは簡単には口を使わない。息子たちも様々なアクションを試すが、エギは完全に無視され続けた。
そんな中、ペアから少し離れて単独で回遊する個体を発見。「狙うならあの単独のやつだな。ペアリング中はほぼ食わない」そうアドバイスしたが、見えている巨大な親イカの存在感は凄まじい。気になって仕方がない。時間だけが過ぎ、勝負は夕マヅメへともつれ込んだ。
夕マヅメに入って期待大(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)廃盤「エギ番長XS」一投目
19時前、風が止み、海が一気に「釣れる空気」に変わった。ここで私は、最後の切り札を投入することにした。手渡したのは、私が福井の春イカで絶対的な信頼を置く「エバーグリーン エギ番長3・5XS(パープルサバ)」。実はこのカラー、すでに廃盤。
廃盤エギ(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)手元のストックも残りわずかで、普段はSNSにも写さないようにしている秘蔵エギだ。「頼むから根掛かりだけはしないでくれ……」心の中でそう祈りながら、息子に託した。
そして――。息子がそのエギをセットし、投げた一投目。「……あ、来たわ」あまりにも冷静な声と同時に、カラマレッティートゥレが限界まで絞り込まれた。
カラマレッティトゥレ(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)3kg超えモンスター現る
最初は根掛かりかと思った。しかし次の瞬間、ドラグが鳴り、ロッドがさらに深く曲がり込む。「いや、これ本当にデカいやつだ!」私は即座にギャフを持って駆け寄った。
愛用ギャフ(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)強烈なジェット噴射をいなしながら寄せてくると、海面に浮いたのは明らかに異常なサイズのアオリイカ。慎重にギャフを打ち、引き上げた瞬間、手に伝わる重さに思わず声が出た。「これ、3kgあるぞ……」
息子が釣った大型アオリイカ(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)計測すると、3120g。文句なしのモンスターアオリだった。
驚愕の3120g(提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)しかも、その個体の背中には、過去に誰かが掛けたと思われる大型ダブルフックが刺さったまま。幾多の修羅場を生き延びた「主」だったのだろう。さらに、この重量に耐えきれず、ギャフまで破損。まさに死闘の末の一杯だった。
20年のキャリア、1日で抜かれる
その後、私も同じ「エギ番長XS(パープルサバ)」を結び直して粘ったが、海の神様は最後まで私に微笑まなかった。ゲストに大物を釣ってもらえるのは、ガイドとして最高に嬉しい……のだが。
「私の20年以上のエギング人生の自己記録が、ほぼ初挑戦の一投で抜かれるとは……」正直、ちょっと複雑である(笑)。もしこれを自分が釣っていたら、15年ぶりの自己記録更新だった。釣りの神様は、時に残酷で、そして最高にドラマチックだ。福井の春の海で起きた、忘れられない一夜となった。
<刀根秀行/TSURINEWSライター>


