岡山県の夏〜秋にかけての風物詩として有名な「四つ手網(よつであみ)漁」。約5m四方の網を4本のアームですくうため、この名前がつきました。実は、岡山ではこの漁をレジャー感覚で楽しめるのです。ゆったりとした時間を気の置けない仲間たちと楽しく過ごせます。では、四つ手網で捕獲できる海の生き物にはどのようなものがいるのでしょうか。
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岡山がメッカの「四つ手網」
「四つ手網」という約5〜6m四方の細かい目の網が設置された小屋で、主に夜間に魚やエビなどを獲る漁を四つ手網漁といいます。
この漁法を体験できる場所は全国的にも珍しく、今回紹介する岡山県岡山市東区の吉井川河口付近以外には、福岡県柳川市の「くもで網漁」くらいしかありません。
漁のシーズンは春から秋にかけてですが、冬でも楽しめます。ベストシーズンは9〜11月頃で、エビ類やカニ類、ママカリ(サッパの地方名)などが獲れます。

四つ手網は現地で体験できる
四つ手網漁は、暗闇の中、網の上に設置されたランプの明かりに誘われた魚たちを四手網ですくい上げるという漁です。すくった魚などを柄の長い小さな網で回収します。
四つ手網漁の体験に行くと、夕方から翌日の朝まで小屋に滞在することができます。
料金は1棟貸しで1万円前後で、定員は10人くらいまで。滞在中は魚獲りができるのはもちろん、ちょっと変わった雰囲気の中で家族や友人らと過ごす時間が楽しめます。
また、小屋には簡易的ですが、調理台やガスコンロ、冷蔵庫、鍋、食器などが揃っているので獲れたての魚やエビなどをすぐに調理して食べることも可能です。
小屋にもよりますが、トイレやテレビ、冷暖房(未設置の場合もあり)も設置されており、快適に過ごせます。ただし、食材や油、調味料は持参する必要があります。
四つ手網漁で獲れる魚やエビを紹介
筆者がこれまでに四つ手網漁で捕獲した魚やエビは、ママカリ、コノシロ、ヒラ、ハゼ、セイゴ(スズキの幼魚)、ヒイラギ、ボラ、ウナギ(稀に)、チヌ、ヒラメ、ベイカ、ヨシエビ、サルエビ(ガラエビ)、シバエビ、アミエビ、タイワンギザミ(モクズガニ)など。
時期によって獲れるものが異なりますが、季節を問わず、色々獲れるのが四つ手網漁の利点です。たまに季節外れの大物が獲れるので、盛り上がります。
この中から厳選して、岡山では代表的な小魚であるサッパ、岡山や香川の特産であるベイカとヨシエビ、そして美味しいシバエビを紹介します。

「ままかり」と呼ばれる「サッパ」
岡山では代表的な小魚サッパ(学名:Sardinella zunasi)。全国的にはこう呼ばれますが、岡山県では「ままかり」と呼ぶことが大半です。

お酒のおつまみや、ご飯のおかずにぴったり。家庭料理でもよく使われるお魚です。
ままかり料理は岡山の郷土料理で、ごはんを借りるほど美味しいため「飯借」からこの名が付いたそうです。
岡山名物「ベイカ」
ベイカ(学名:Loliolus “Nipponololig” beka)はヤリイカ科の小さなイカで、広島では「チイチイイカ」とも呼ばれます。有明海にも分布していますが、岡山と香川が名産地として知られています。

初夏のころ、米粒のような卵を抱いているので、ベイカ(米烏賊)と名付けられたそう。とても美味しいので、漁獲のある地域ではよく食べられていますよ。

獲れたてのベイカの内臓を取って刺身にすると美味! 握りずしも最高です。また、卵を抱えたメスを醤油や酒、みりんで煮るとモチモチ食感と弾力がとっても美味しいのです!
なお、瀬戸内では、丸ごとさっと茹でたものを酢みそで食べることも多く、お酒のつまみとして親しまれています。