近ごろは人気アニメ映画の舞台になり、ファンの聖地巡礼の地としても注目を集めている伊豆諸島の八丈島。釣り人目線で言えば、飛行機を利用すれば、羽田空港からわずか40分で到着する遠征釣行のメッカであり、時に30kgオーバーの魚とも対峙できる憧れの地となっている。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版APC・田中義博)
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八丈島へ遠征釣行
私が所属する「味釣会(みつるかい)」では、毎年有志を募り、遠征を続けている。今年は6人で9月15日(日)からアサギクを利用し、2泊3日の行程で釣行してきた。
同宿は宿泊施設を併設し、現地での釣りを徹底的にサポートしてくれる心強い存在。利用する交通手段に合わせ、空港やフェリー港への送迎はもちろん、狙う魚や釣り方に合わせて、仕掛け類の購入や仕立船の手配。さらに、タックルのレンタルも豊富なことに加え、レンタカーまで完備。手ぶらで行っても遠征釣行が楽しめることが最大の魅力だ。
初日は7時半初の便で八丈島空港に到着すると、スタッフの荒井聖史さんが出迎え。宿に到着後、さっそく準備を済ませ、3人ずつ2班に分かれ、私は神湊港の宇乃丸に乗船。もう一組は八重根港の幸吉丸からオナガダイ狙いの中深場釣りで出船した。
初日はオナガダイを狙う
宇乃丸の舵を握るのは小栗清光船長。1年ぶりの再会を済ませると、9時40分にポイントへ向けてモヤイを解く。
「潮が速いのでオモリは350号。大きいのも交じるから、ハリスは14号以上。ハリも小さいとアタリは出るけどバレが多くなるから、大きめでやってね」とアナウンスされる。
私はハリス14号、ハリはヒラマサバリ15号3本、全長3.4m、エダス25cmの自作仕掛け。エサは1cm幅で8cmほどの短冊にしたイカを準備、センターにチョン掛けして準備万端。
「ポイントに着きましたよ。水深は280m。潮が速いからイトフケが出ますからね。底から8mくらいのタナでやってみて」の合図でスタート。
自己記録更新の5.5kg本命
ミチイトは340mほどで着底。指示ダナで待つとすぐにアタリ。イトがフケているぶん、しっかりアワセを入れてから電動リールで巻き上げていく。
重量感たっぷりで、途中何度も竿がのされるトルクフルな強い引き。巻き上げる時間も長く感じたが、無事にビシが上がり、海面下にはユラリと大型の魚体。姿を見せたのは5.2kgの本命オナガダイ。自己記録更新に思わず笑みがこぼれる。
同船の北原さんと松野さんも本命をゲット。北原さんは3点掛けを披露、私はさらに自己新となる5.4kgを手にするなど、初日から大満足の釣果に恵まれた。
二日目はカンパチ狙い泳がせ釣り
二日目も同じメンバーで二船に分かれて乗船。この日はカンパチを本命とした泳がせ釣り一本勝負。それぞれの港を5時前に出船する。
船は一路、八丈小島周りへ。まずは、エサとなるムロアジ釣りからスタートするが、この日はなかなか船下に止まらず大苦戦。1時間半のムロ釣りは、3人で20尾とやや心もとない釣果で泳がせ釣りへ。
船はやや北上して、水深85mのポイントでリスタート。ムロアジは目通しで装着。仕掛けを落下させていくときは、エサに負担をかけないよう、リールのスプールをサミングしながら送り込んでいく。
オモリ着底後、海底の起伏変化のアナウンスを聞きながら、指示ダナの海底から8mの高さをトレースするよう、ひん繁に底取りを繰り返していく。
しばらくすると、竿先がバタつき、エサのムロアジが暴れるシーンが何度か続くが、本アタリがなかなか訪れない。
強烈な突っ込み
そこで、指示ダナより高めの12mのタナからスタート。エサが落下していく誘いをかねて、30秒ごとに1mずつ落とし込んでみる。すると、2m落とし込んだところでエサが激しく暴れた直後にリールの手前から竿が一気に曲がり込んだ。
すかさずキーパーから外し、竿尻を下腹部にあて、竿を両手で支えながら構えるものの、ファーストランは本当に強烈。
というのも、この魚はハリ掛かりした直後に根に戻ろうとするため、リールのドラグはきっちり締め込んでおくことがデフォルト。つまり、ミチイトを引き出されないよう、カンパチの引きを耐えることが求められる。
何度も竿がのされそうになりながら、渾身の力で耐えながら、電動で巻き上げていく。これまでの経験から、推定20kg近い大きさと判断。断続的な強引に何度も耐えながら、残り20mとなったところで最後の突っ込みを見せる。
自分の上体が持っていかれそうになりながらも船べりで何とか耐えていたが、次の瞬間、一気にテンションが抜けてしまった。
「あ~っ」と船長含め、仲間の声。せっかくのチャンスを逃してしまった悔しさはもちろん、全身に訪れる虚脱感で思わず天を仰いでしまった。
7.2kg確保に安堵
カンパチからのコンタクトが明確になったので、次の流しも同じく高めのタナからの落とし込みに狙いを絞る。同船者にも情報を共有。すると、北原さんがアタリをとらえる。しっかりと食い込ませてから、危なげないやり取りで、船中1尾目となる5kg級をゲット。
次の流しでは、私に再びアタリ。ハリ掛かりするまでしっかりと待ってから竿を立てる。
1尾目ほどのトルクの強さはなかったが、それでもこの突っ込みは何度味わってもパワフル。無事にリーダーが入ると船長がタモ取り。7.2kgをゲットし、ホッと胸をなでおろす。
同じエリアを何度か流し直し、北原さんは6kg級を追加したが、その後、アタリが遠のいてしまう。
全員カンパチ手中
10時半の時点でムロアジの在庫は残り6尾。延長しての釣りが難しい状況のため、船長は「港へと戻るルートの中で、やりましょう」と話し、ポイント移動。
晴れ渡った空に稜線が映える八丈富士がじつに見事。亜熱帯らしい原生林が広がり、自然あふれる景色を船上から楽しむのも八丈島遠征の楽しみ。
約40分で神湊漁港の目の前、水深120mのポイントに到着。ここは、私自身、過去にも良型を手にしたことがある。
その期待通りに、ひと流し目からムロアジが暴れ、ズドンと竿が引き込まれる。何度かの強い引きを耐えて上がったのは7.4kg。松野さんもその直後に6kg級をゲットし、全員カンパチを手にすることができた。
16kgの大物も登場
さらに、この日のクライマックスが北原さんに訪れる。締めたドラグからミチイトが引き出される強烈な引き。顔を真っ赤にしながら耐え、ジリジリと間を詰めていく。明らかにこれまでの魚とはスケールが異なることは明白であった。
無事にリーダーが入り、船で一番大きなタモで取り込み成功。16kgを手に、その重さを実感する表情が印象的だった。別船の幸吉丸組も全員カンパチをゲットし、全員安打で二日目を終える事ができた。