「味の表現」が付いているサカナたちの不思議 アマダイは甘いけどシブダイは渋くない?

「味の表現」が付いているサカナたちの不思議 アマダイは甘いけどシブダイは渋くない?

魚の名前には「味の表現」がついたものがいくつかありますが、紛らわしいものもあります。

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「甘鯛」は甘い

言わずと知れた高級魚のひとつ「アマダイ」。いわゆるアマダイと呼ばれる魚にはアカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの3種類がありますが、全てに共通する特徴が「身が甘い」こと。

「味の表現」が付いているサカナたちの不思議 アマダイは甘いけどシブダイは渋くない?アカアマダイ(提供:PhotoAC)

サッパリした白身のなかに、フワッと漂う不思議な甘みがあり、これが高級魚たる理由といえます。とくに生の状態で強く感じられるように思います。

一般的に「魚の甘み」は舌の温度で溶ける不飽和脂肪酸によって感じられることが多いのですが、アマダイの場合は筋肉に含まれる旨み成分の多さにより甘く感じられるのではないかと言われています。

「苦鮒」は苦い

ポジティブな表現ではなく、ネガティブな表現を名前につけられた魚もいます。その代表は「苦鮒」でしょう。

苦鮒はフナと付きますがフナの仲間ではなく、同じコイ科の「タナゴ」の総称のひとつです。コイの仲間はいずれも胆嚢に強い苦味を持つのですが、タナゴのそれはとくに苦く、また魚体が小さいために丸ごと食べられることが多いため、苦い魚というイメージが強くあります。

「味の表現」が付いているサカナたちの不思議 アマダイは甘いけどシブダイは渋くない?タナゴ(提供:PhotoAC)

この苦味のためにタナゴはあまり食材として珍重されてはいないようですが、甘めの佃煮にすると燻し銀の味わいとなり、日本酒によく合うおつまみとなります。

シブダイは渋くないしカライワシは辛くない

さて、一見するとこれらの魚名と同じように「味の表現」が名前の由来になっているようで、実はそうではない、というものもあります。

そのひとつがシブダイ。標準和名はフエダイというこの魚、西日本の広い範囲でシブダイという名前で呼ばれており、フエダイと呼んでも通じないこともしばしば。

「味の表現」が付いているサカナたちの不思議 アマダイは甘いけどシブダイは渋くない?フエダイ(提供:PhotoAC)

その味は極めて良く、渋みなどひとつもありません。この呼び方の由来はハッキリしていないようです。

また、南方系の魚で近年増えているカライワシも、別に辛いというわけではありません。これも由来はハッキリしませんが、漢字で書くと「唐鰯」となり、イワシに似ているけど大きくてちょっと変わっているために「唐の国(大陸)から来たようなイワシ」と例えたのかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>