北海道の湖には「ロブスター」と呼ばれる大きな甲殻類がいます。一体なぜそこに生息しているのでしょうか。
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北の大地に潜む「淡水のロブスター」
道東にある観光地で、温泉街でも知られる大きな湖・阿寒湖。ここには「湖のロブスター」とでも呼ぶべき、巨大な淡水甲殻類が生息しています。
そのロブスターの名はシグナルザリガニ。一般的にはウチダザリガニの名で知られています。大きなものではハサミを広げたサイズが20cmを超え、ザリガニという言葉からは想像できないサイズ。まさに小さなロブスターです。当地ではレイクロブスターの名前で商品化されています。
阿寒湖では「ウチダザリガニ漁」が実施されており、漁獲されたものは即座に茹でられ、周辺のホテルや飲食店で提供されています。
危険な侵略的外来種
このシグナルザリガニですが、その名前からも分かる通り日本においては外来種です。昭和初期頃にアメリカより移入され、その食材的魅力から各地に放流されました。
しかしその大きなハサミと貪欲な食性で在来種を食害したり、在来の固有種であるニホンザリガニの生息域を圧迫することで、在来の生態系を破壊してしまうリスクが指摘されるようになりました。
結果として2006年には特定外来生物に指定され、許可のない飼育や運搬、販売等の経済的利用が禁止されました。ただし阿寒湖など、指定前からシグナルザリガニ漁業が実施されていた一部の湖沼では、現在でも特別に漁獲・販売が許可されています。
駆除して食べよう!
このシグナルザリガニですが、実はいまもなお、各地で勢力を広げています。
低水温を好むことから北海道以外ではあまり広がらないと言われていたこともありますが、本州でも河川の上流域や山上のダム湖などで生息が確認されています。東京の奥多摩湖でも数年前に捕獲され、下流の多摩川への逸出リスクが問題になっています。
シグナルザリガニはもともと食用のために移入されたこともあり、非常に美味しいザリガニです。アメリカザリガニと比べると身の量が多く、ハサミの肉もボリューミーで、味もまさにロブスターそのもの。
近隣の川で繁殖が確認されたら、採れるだけ採って食べるのがオススメ。美味しく食べて生態系の保護にも繋がります。ただし特定外来生物のため行きたまま移動ができないというデメリットもあり、現地で茹でてから持ち帰るのが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>