昆虫食が注目されてしばらくたちますが、最近では「魚の昆虫食」にも注目が集まっています。
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養殖マダイに虫を食べさせると?
日本の食卓に欠かせない魚のひとつ・マダイ。肉食性で、とくに甲殻類や小魚を好んで食べ、成長が早く食味も良いために盛んに養殖されています。
そんなマダイの養殖において、最近ちょっと変わった「餌」を用いて畜養する試験が行われ、注目を集めています。その餌とはなんとウジ虫!
このウジはアメリカミズアブという名前の昆虫の幼虫で、実は最近各方面で「資源」として注目を集めている存在なのです。
アメリカミズアブとはどんな虫?
アメリカミズアブはその名の通り、アメリカ原産の昆虫です。我が国では外来種ということになりますが、広い地域に生息しており、とくに郊外の建物周りではよく見かけます。
ハチに似ていますがハエの仲間で、幼虫は剛毛の生えたウジ虫のような見た目です。有機物を餌として育つため、ゴミ捨て場や畑の脇の生ゴミ捨て場、堆肥置き場などで発生します。
この昆虫のユニークな特徴として、非常に耐熱性が高いということが挙げられます。幼虫が生息する有機物の山は微生物の活動が活発なため、内部は発酵熱で60℃ほどにまでなります。そんな中でも彼らはピンピンしているのです。
なぜ海水魚に昆虫を食べさせるのか
淡水魚たちはしばしば昆虫を好んで食べますが、海水魚であるマダイが自然界で昆虫を食べることはほぼないと思われます。それではなぜアメリカミズアブを食べされるのか、そこにはいくつかの理由があります。
まず、マダイにアメリカミズアブを食べさせると、非常に健康になるということが判明しています。アメリカミズアブでできた飼料を与えられたマダイは腸内細菌叢が多様化し、とくに健康や成長に影響を与える細菌群が増加したそうです。
またアメリカミズアブを飼料にすることで、通常の飼料の主要原料である魚粉の使用料を減らすことができます。我が国の飼料用魚粉は大半を海外からの輸入に頼っており、近年はその高騰によって養殖魚の価格も高止まりする傾向があります。したがってアメリカミズアブをはじめとする昆虫飼料の普及によって、安価で美味しい養殖魚が口にできるようになる可能性が高いのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>