全国には様々な「地元で愛される海藻」がありますが、今回ご紹介する海藻もそのようなもののひとつです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
佐渡で愛される海藻「アカモク」
先日、所用で新潟の沖合に浮かぶ佐渡島に行ってきたのですが、島のお寿司屋さんでちょっと気になる料理を見つけました。
メニュー表に乗っていたのは「ながもそば」。新潟県でナガモと呼ばれている「アカモク」という海藻が乗った汁そばです。
汁はアカモクから出たヌメリの成分によると思われるとろみがあり、さっぱりした出汁の味とシャキシャキとした海藻の食感との相性が抜群。非常に美味しく、ついついお代わりしてしまいました。
佐渡島ではほかにも様々な料理で「ながも」の文字を見かけ、当地で非常に愛されていることが実感されました。佐渡のアカモクは全漁連が認定する「新潟のプライドフィッシュ」にもなっているそうです。
ハナタレと呼ぶ地域も
アカモクは全国の浅い磯場に生えており、各地で食用にされています。筆者の住んでいる神奈川県でも、最近ではスーパーで県内産のアカモクを見かけることがあります。
一方で、このアカモクをあまり食用にしない地域では「ハナタレ」なる名前で呼ばれることがあります。前述のようにこのアカモクには強いヌメリがあり、とくに加熱することで強まります。ハナタレはこれを鼻水に例えた名前だと思われます。
近縁のホンダワラという海藻があり、こちらはアカモクによく似ていますがヌメリがさほどありません。このホンダワラを好んで食べる地域では、アカモクは「よく似た偽物」という扱いになってしまうのか、ハナタレなどのちょっとひど目な名前で呼ばれることがあるようです。
「鼻水みたい」だから健康に良い
このアカモク、最近では「健康食品」として注目される例も増えてきているようです。
アカモクのヌメリ成分はフコイダンと呼ばれる水溶性の食物繊維で、摂取すると免疫力の向上やコレステロール・血圧の降下作用などが期待できるとされています。古くから「腫瘍ができた人に飲ませる」生薬としてよく知られた存在だったそうです。
アカモクのヌメリは、ヌメリ海藻としてよく知られたメカブやモズクよりも強く、フコイダンの量も多いと言われています。つまりアカモクは「鼻水みたい」だからこそ価値があるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>