今年もトンボの季節がやって来た。トンボといっても赤とんぼやオニヤンマの話ではない。トンボマグロ(標準和名ビンナガ)のことだ。一般的にはビンチョウの名で知れ渡っているが、胸ビレが長く水中で泳ぐ姿がトンボに見えることから、トンボと呼ばれることも多い。このトンボをジギングで狙うからトンジギ。今回はこのトンジギについて解説したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
ドテラ流し
さて実践編だが、トンジギでは船をドテラ流しにする。ドテラ流しとはタイラバやティップランにも用いられる流し方で、船を風や潮に任せて横流しにするためアングラーは風上側の片舷に並んで釣るのが一般的だ。
アングラーからすれば船は背中方向に流れていくため、ジグを投下すればラインは前方に払い出されていく。この払い出される角度によって、ジグの重さを決める。風が強ければ400~450g、逆に風がなければ200~250gまで落とすこともある。
ドテラ流しの利点としては、何といっても広範囲を探れること。根に着く魚をピンポイントに狙うわけではなく、広大な大海原を常に泳ぎ続けるビンチョウを狙うにはコレしかないという流し方なのだ。
魚探に反応があれば、船長から「何m~何mの間を狙ってください」というアナウンスがあるので、そのレンジまでPEラインラインのカラーを見ながらジグを落とす。ただし、ラインが斜めに払い出されているので、実際出したライン長よりも多めに出す。例えば100mまで落としたいのであれば、ラインの角度にもよるが130mぐらいはラインを出したい。
誘いから取り込みまで
誘いのアクションは、青物のようにガシガシとしゃかりきにシャクる必要はない。ゆったりと持ち上げてわずかにフォールを入れるような感覚で十分。ビンチョウは鼻先をジグが通れば、高確率で食ってくる。
任意のレンジを探ったら再びジグを落とすが、最初よりも深く落としてもいいし、浅いレンジで止めて誘い直してもいい。魚は常に動いている。同じレンジだけではなく、横にも縦にも広く探ることを心がけよう。
アタリはドスンとロッドが止められる。しっかりアワセを入れて、リフトを開始しよう。小トン程度であればさほど走らないし、ラインを出されても止まればゴリゴリ巻いてくればいい。中トン以上になると、テンションを抜かないようにポンピングで浮かせてくる。
魚が浮いてくれば、船長がタモと入れるかギャフを打ってくれる。その後、船によっては船長がエラと内蔵を抜いて氷間と呼ばれる船の収納スペースか、各自のクーラーボックスか船の氷間に入れてくれる。エラワタ抜きは自分で行う船もあるので、事前に確認して場合によってはナイフや包丁を持参しよう。
アフターフィッシングも魅力
マグロ類の中では、ツナ缶の材料にもされ比較的格下の部類に入るビンチョウだが、どうしてどうして、その味がなかなかのもの。しっかり寝かせればねっとりした甘味が増し、刺し身は抜群のうまさ。フライやマグロカツなどの揚げ物にしてもおいしい。
身質が柔らかいため、ユッケなんかにしても最高にうまい。脂分が少ないと言われるが、10kgを超えるとしっかりとトロの部分も味わえる。豪快なパワーファイトだけでなく、アフターフィッシングもしっかり楽しんでほしい。
最後に
ここ数年で一気に人気が出たトンジギ。ビンチョウ自体は昔から水揚げがあったので、多くいたのだろうが、ようやく釣りとして確立してきた感じだ。小さくてもマグロはマグロ、近海ビッグゲームというべきトンジギにぜひ挑戦してほしい。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>