瀬戸内海で水揚げされたとある高級魚。実は誰でも口にしたことがある「惣菜魚」でもあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
キロ4万円のカレイが水揚げ
明石鯛や明石のタコなどの高級ブランド魚介を育むことで知られる明石海峡に臨する、兵庫県明石市。ここにある東二見漁協で今月頭、とある「高級魚」が水揚げされ、関係者の驚きを呼びました。
その高級魚とは「アマガレイ」というカレイの1種。アマガレイは通常は大きくても40cm程度、重さも1kgを少し超える程度なのだが、今回水揚げされたのは全長50cm、重さはなんと1.9kgにも達するという大物。
そんな巨大アマガレイに今回ついた値はなんと76,000円(kgあたり40,000円)!しかもこれは安いもので、仮に競りにかけられていたら10万円を超えた可能性もあるということです。
アマガレイってどんなカレイ?
1㎏4万円の魚と聞くと、とてつもなく特別な高級魚に思えます。しかし実はこのアマガレイ、標準和名はマコガレイ。全国で最も普通に食用にされるカレイの1種だったりします。
浅い沿岸部に多く生息し、釣りでもお馴染みの魚。ポイントとタイミングさえ合えば、小さい子供でも簡単に釣りあげられる魚です。
全国の魚市場で毎日のように顔を見せ、普通のスーパーでも当たり前に販売されます。もちろんこのような高値が付くことはありません。
「高級魚」であり「惣菜魚」でもあるカレイ
ではなぜ、そんなマコガレイにこのような高値が付いたのか。それは明石という「ブランド産地」で水揚げされたこともありますが、それ以上に「大型」で「活け」の個体だったというのが理由です。
マコガレイに限らずカレイ類は「活けかそうでないか」で味が大きく変わり、扱いが全く違うものになります。活けのカレイはしこしことした歯ごたえと強い旨味がありますが、ひとたび死んでしまうとその身は水っぽくなり、皮からも独特の匂いが出てしまいます。
加えてマコガレイは大物であるほど身が厚くなり可食部が増え、脂乗りもよくなります。そのため活けの大物は完全に高級魚として扱われるのですが、そうでなければそこまで高価ではなく、中型以下の野締めものともなれば一匹数百円の惣菜魚になってしまうのです。
ただし、野締めものであってもから揚げや煮つけなどにすると大変美味しく食べられるのはご存じの通り。高級魚としても惣菜魚としても愛されている大事な魚なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>