乗っ込みクロダイを攻略しよう
3月といえば早春。そろそろカカリ釣りのクロダイがシーズンに突入する。まずはいったん外洋で越冬したクロダイたちが産卵という一大イベントを控え、水温上昇とともに湾内へ移動。第1派、第2派と、いくつものグループに分かれてエサをあさりながら、より湾奥へと産卵場を求めて活発に動き始める。
いわゆる「乗っ込み期」といわれるのがこの時季なのだが、実のところクロダイにはハッキリとした乗っ込みの行動はなく、元々はヘラブナでの現象を代用したもの。
クロダイではどのエリアを例に挙げても、なんとなく始まり、いつの間にか終わってしまう……。あるいは1月、すでに抱卵している個体がいると思えば、7月の夏近くになってもいまだ抱卵しているものもいたりする。クロダイの乗っ込みに関しては、実につかみどころがないのが実状だ。
今年は期待できるか?
前述したように、クロダイの乗っ込み(開幕)には決まったパターンというものがなく、つかみどころがないが、さらには数年周期で好・不漁を繰り返している。
紀伊半島、特に三重県下の状況を振り返ると、昨シーズンは好・中・不で分別すれば中といった具合。決して好調とはいえない年だった。好・不漁になる理由にはさまざまな要因が関わってくる。
例えば、海水温に大きな影響を及ぼす黒潮の蛇行(接岸距離)や天候、台風といった気象状況など。なかでも私は最も関わりが強いと感じるのが、季節感のメリハリだ。
日本には春夏秋冬、四季があるが、夏は夏らしく暑く、冬は冬らしく寒いといった、いわゆるメリハリのある季節感を意味する。これまでを振り返ると、不漁だったシーズンの前年は必ず「暖冬」や「空梅雨」というような気象変動が目立った。
さて、今シーズンのクロダイ事情はどうだろうか。昨年は台風こそ少なめだったものの、夏の猛暑と今冬も各地で数年ぶりの厳しい冬となっている。三重県の釣り場で代表される鳥羽湾では、すでに12度前後。南部の五ケ所湾や尾鷲湾になると16度前後と水温も順調に上昇しており、今春の乗っ込み期は好材料がそろっているといえる。乗っ込みクロダイの期待は大いにあるだろう。
釣り場紹介
今季もそうだったのだが、例年の三重県は2月の寒さが厳しいタイミングに南部で抱卵モノの大型が動く。全てがそうであるとはいえないが、その大半は「居着き」で前述した外洋から差し込んできたクロダイとは違う。
従ってくれば卵を抱えた大型。ときには60cmに迫る超大型も飛び出すが、数は望めずに単発での展開が多い。釣期も約1カ月といったところだ。南部でひとしきり動きがあって、その後今度は北部の鳥羽周辺から英虞湾にかけての釣り場がにぎやかになってくる。
このタイミングで釣れるようになるクロダイはヘラブナのそれに近いいわゆる乗っ込みで、先にも触れた通りメリハリは歴然。なかでも的矢湾は最もハッキリしており、早い年で3月上旬。例年のパターンなら中旬ごろから、5月のGWごろまで釣れ続く。
すでに2月中旬、的矢湾口に最も近い安乗で好調な滑り出しだったが、クロダイの行動は順に畔蛸、千賀、そして湾奥の三ケ所、的矢へと進んでいくようだ。もしかしたら最奥部の伊雑ノ浦(いぞうのうら)辺りが絶好の産卵場になっているのかも知れない。
鳥羽の浦村湾も的矢湾ほどではないが、やはりほぼ同時期に乗っ込みモノがあちらこちらで釣れ始める。
浦村湾は形状が複雑に形成されていてポイントも広大。釣れだしたからといって、全てのポイントで満遍なく釣れるという訳ではないが、うまく当たれば簡単にクロダイを手中にできる。英虞湾も同様だが、最も湾口に位置する志摩半島の御座から浜島、順を追って湾奥の大崎や鵜方へとクロダイは差し込んでいく。
乗っ込み期の魅力
乗っ込み期の最大の魅力は、なんといっても良型が数狙えるところだろう。厳寒期や梅雨期のような特別大物は難しいだろうが、とにかく型ぞろいが大した苦もなく数が出る。だがあらかじめご了承いただきたいが、全てのポイントではなく、群れで移動する回遊コースに当たればの話。
もし回遊コースから外れてしまうと一筋縄ではいかず、むしろ何をやってもお手上げ状態も珍しくないのがこの時季。ダンゴブレンドやさしエサ、そして攻め方もさることながら、最重要であるのは「当日のポイント運」であることも忘れてはならない。