長い海岸線を持ち、様々な魚種が豊富に獲れる三重県。そんな三重県が全国で1位、総生産量の実に6割を占めるという、ちょっと意外な海産物があります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「アオサ」の種付け作業
三重県紀北町で今月上旬、特産の「アオサノリ」の種付け作業が始まりました。
当地では波の穏やかな入り江を利用したアオサノリの養殖が盛んです。種付け作業では、普通のノリと同様に、胞子が付いた養殖網を海の底に打ち込まれた支柱に張り付けていきます。
養殖網は5日ほど海面を漂うように設置され、その間にアオサノリがしっかりと根を張ります。その後、沖合に移動させて大きく成長させていくのだそうです。
三重県が生産量1位
南北に長く、伊勢湾や英虞湾のような穏やかな内湾から、黒潮の洗う波の荒い外海まで、様々な顔の海岸を持つ三重県。当然、獲れる魚種も多く、鳥羽や尾鷲のような全国に名を知られた漁港も多く存在します。
伊勢の名を関したイセエビはもちろん全国屈指の水揚げで、他にもブリやマグロ、最近は養殖のマハタといった高級魚でも知られています。そんな中で、マイナーながらも全国トップの生産量を誇る魚介類が「青のり」の名で売られているアオサノリです。
三重県のアオサノリ生産量は、全国の実に6割をも占めています。河川の流入が多く栄養塩の多い伊勢湾から、黒潮の影響も受ける紀北町の入江まで、三重県の様々な場所でアオサノリの生産は行われています。
アオサにも色々あるけれど
さて、実は「アオサ(青のり)」と呼ばれる海藻は1種類ではありません。というのもそもそも「アオサ」というのは「沿岸性の緑藻類の総称」とも言える言葉なのです。
中でも有名なのが、内湾の海岸によく打ち上がっている緑色のビニールテープのような海藻。アナアオサやオオバアオサなどといった種類のものが多いです。沖縄など一部の地域を除き、あまり食用にされていません。
また逆に「最高級アオサ(青のり)」として知られているものは、河口など塩分濃度の低い場所に生息するスジアオノリ。四万十川で採れるものが特に有名です。
そして、一般的に市販されている「あおさ」「青のり」のうち、最も多くを占めるものがヒトエグサというもの。三重県で養殖されている「アオサ」はこれになります。
しかし面白いことに、実はこのヒトエグサは最近になって「アオサ目」の海藻と異なる特徴を持つことがわかり、別のグループに再分類されました。つまり、我が国で最も食べられている「アオサ」は、実はアオサではない、ということになるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>