我々の食卓に欠かせない海苔がノリという海藻から作られているのは常識。しかし、その「ノリ」にもいろいろな種類があるというのはご存知でしょうか。
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新種のノリが発見される
勝浦市の県立中央博物館分館「海の博物館」は先月、いすみ市や銚子市で採集した「ノリ」が新種であったことが判明した、と発表しました。このノリは四方に手を広げるような形状をしていることが特徴で、和名を千手観音になぞらえ「センジュアマノリ」と名付けられました。
このセンジュアマノリは、同館で2002年に実施された、房総の海藻の多様性を明らかにする目的の調査収集にて初めて採集されました。
はじめは形態的特徴から、近縁種の「ウップルイノリ」と同定していたそうです。
しかし後年になって、山口県下関市で実施した調査で発見された特異なノリとの共通点が確認され、DNA解析を行ったところ同じ種であると確認、かつ新種であることも判明したそうです。現在、同館で標本を展示しているとのことです。(『海の博物館でノリの新種発見 勝浦(千葉県)』房日新聞 2021.8.25)
ノリの種類について
我々が日々食べている一般的な「板海苔」「味のり」はアマノリという海藻で作られるものがほとんどです。アマノリとは紅藻類ウシケノリ科に属する海藻のうち、膜状の体をもつ種の総称です。
このアマノリの中でも最も一般的に食べられているものは「スサビノリ」という種類。自然環境下では浅瀬の波打ち際の岩場やテトラポッドに生えます。とくに冬になると波打ち際にびっしりと張り付き、水を含むと非常に滑るので釣り人や漁業関係者に嫌われています。
現在流通している海苔の材料であるスサビノリは、ほぼ全量が有明海や瀬戸内海などの浅い内湾で養殖されたものです。東京湾でも盛んに養殖が行われていますが、実はかつてはスサビノリではなく、その近縁の「アサクサノリ」という種が主流でした。しかしアサクサノリは干潟の埋立て等で激減してしまい、スサビノリに取って代わられるかたちになりました。
その後、三重県でアサクサノリの養殖技術が確立され、これを用いたノリが製造・販売されてます。味や風味がよく、希少性も手伝って1枚100円以上する高級品となっているようです。
実はたくさんあるノリの原料
このスサビノリやアサクサノリ以外にも、かつては各地にローカルなアマノリの食用品種があったと考えられています。もちろん現代にも残っているものは多々あります。
例えば、やや波の荒い外洋に面した海岸には、髪の毛のような見た目の「ウップルイノリ」が生えます。これは磯の香りが強く、板海苔にすると丈夫で強い風味があり、炙っただけでも素晴らしい酒の肴になります。山陰地方では雑煮の具として欠かせないものです。
また、ラーメンのトッピングとしても人気の高い「岩のり」にはオニアマノリ、マルバアマノリなどのアマノリ類が用いられます。いずれもスサビノリより厚く固く歯ごたえと風味が強い種類です。
変わったところでは、河口干潟に生息するカイガラアマノリという種類があります。全国的に生息しており、味も良いですが利用されることはほとんどなく、唯一山口県のみで養殖の研究が進められているといいます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>