釣りにはお小遣いが必要。そう、エサ代から、渡船代から、道具代に加えて、交通費や、遠征の場合は、宿泊費や人間の食事代が必要になる。だから、若くて給料が少ない時には日頃から節約してお小遣いを貯めて、釣りに出かけた。これはそんなビンボーだった若かりし日に経験した怖い?お話である。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS編集部)
釣り費用の捻出はまず節約
釣り費用の捻出はまず節約ということで、釣りに行くとき自体も節約した。節約方法は、高速道路を使わずに、下道を走った。徳島から愛媛宇和島への釣行は、今でこそ高速道路を利用すると4時間くらいで現地に到着できるが、当時は高速道路も十分開通していなかったこともあって、それならいっそ下道を走ろうと、徳島から宇和島の目的地まで下道を走った。時間は倍の8時間くらいかかったかなあ。それでも、若いときは元気ビンビンで、出発を早めればいいだけよ。運転は仲間と交代したら大丈夫!てなもんであった。
食事代の節約もした。24時間コンビニが開いているので、気軽にお弁当やパンや飲み物が買えるが、コンビニがなかった昔の人のように自宅からゆで卵とおにぎり持参で出かけたものだ。やっぱり自宅のおにぎりは100%コシヒカリで、お米の炊き方も自分の好みに合っているので、冷えてもうまかった。むしろコンビニ弁当よりもうまかったかもしれない。
極めつけは、お茶である。一緒に釣行した釣友は、ペットボトルのお茶を持ってきていたが、なんだか色が違う。聞いてみると「家のお茶じゃ」とのこと。そして、そのお茶がなくなると、船頭の家の水道水をペットボトルに詰め替えて船に乗っていた。
お金の節約か時間の節約か
とはいえ、もろもろ準備に時間がかかった。現代人は時間の節約には散財はいとわない。お金を出せば、自動販売機でジュースでもお茶でも何でも買える。ところが、節約をして釣行費を捻出したいと考える我々は、手間(手間=時間)をかけた時代であった。
お金を節約するために手間を惜しまない昔話は、今の若い方にとっては、ある意味怖い話かもしれない。
落とし物
そして、そうやって節約しても痛い出費がある。特に磯釣りでは、大概落とし物をする。高価なウキを7個切られたとか。5個切られたとかは普通であった。細いミチイトでシモリの際をこすりつけるように攻めて、せっかく掛けた魚に切られるのである。ならばと太いイトにすると、今度は見向きもされない。仕方がないのでまた細いイトにし直して、切られる。ウキ代金だけで、渡船代を上回る損出なんてこともあった。
またある時には、磯で準備中、換えスプールを、コロコロポチャンと2個とも落としてしまったりもした。7mの長い玉網を海中に落としたり、自慢の遠投仕様のまきエシャクなどは、エサよりも遠くにピャーーーと飛んでいった。
そして、その度に、恐る恐る愛する妻に話をして、お小遣いをもらう羽目になる。これもまた怖い話である。
落としてないのは?
今度は、竿が折れた。これも、いつものことである。予備竿まで折れた経験も、皆さんにもあると思う。「わしの竿は改良しとる。だから強い。エヘン!」と釣友が威張るので、私が「パワー穂先だろ?」と折れて短く補修した竿を指摘して、「私と一緒じゃ」というと、大笑いになった。
竿先だけなら補修すればいいが、こんなことがあった。竿先を折ってしまって慌ててしまい、玉網の柄を踏んづけて玉網の柄まで折ってしまった。これでさらにあわてて、今度は、竿の先だけでなく元の方まで折ってしまい、せっかく掛けた魚は糸が切れて海の中に潜っていってしまった。魚とのやり取りをする前の「あちゃー」である。仕方ない。
当然、愛する妻には、小遣いをもらうためにハエのように手をこすりあわせて、お願いすることになる。そこでの大蔵省(妻)のひと言が強烈パンチだった。「落としてないのは、命だけやな」と。
それでも釣りはやめられない、バカな男である。だって、地球は僕らの遊び場なんだもん。
<濱堀秀規/TSURINEWSライター>