関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴

水軒一文字という名前は聞いたことはあっても、実際に行ったことはないという人が案外多いのではないだろうか?渡船の乗船手続きも釣り座の構え方も、暗黙で独特のルールがあって初めて釣行する人は戸惑うかもしれないが、今回の投稿が少しでも参考になれば幸いである。

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(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

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伴野慶幸

へっぽこ釣り師の伴野慶幸です。尼崎~垂水間の渡船利用の沖堤防 がメインフィールドです。

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かさ上げ・増築工事で激変した沖防波堤

実際に水軒一文字に行ってみると、圧巻の光景を目の当たりにする。これは数年間にわたる防波堤のかさ上げ・増築工事によるもので、ズバリ言うと、大阪湾の沖波止よりもはるかに壮大なコンクリート構築物で、言わば和歌山港の巨大要塞といった面持ちの釣り場である。

水軒一文字は旧波止と新波止の2つの波止の総称で、位置関係や船着場などは略図を参照いただきたい。旧波止は和歌山本港沖外防波堤、新波止は和歌山本港沖南防波堤が正式名称で、新波止は1250mで、旧波止は2000m以上ある、いずれも長大な防波堤である。外向き(沖向き)はテトラポットが積まれている。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴水軒一文字略図(作図:TSURINEWSライター伴野慶幸)

旧波止

では、外向き、内向きが別世界な旧波止から紹介していく。

外向き

外向きはテトラの上からキャスティングするルアーフィッシングのポイントだが、船着場にある階段を上り下りしないと外向きとの行き来は出来ない。テトラは大きく隙間も大きいので、足元は非常に悪い。夜明け前の視界が悪い時間帯や、雨で足元が濡れている時などは、安全面で細心の注意が必要だ。

長大な波止だが、常連達によれば、特定の場所でしか釣れず、シビアな釣り座選びが釣果の明暗を分けるそうだ。青物、タチウオからアコウに至るまで獲物は豊富なので、釣果情報をこまめにチェックして好機を捉えて釣行し、釣り座がハマれば、大海原でのルアーフィッシングの醍醐味が味わえるだろう。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴旧波止の沖向き(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

内向き

内向き(陸向き)は、水深は壁際で8~10m余り、海面との高低差は4~5mぐらい。タモ網は5m以上をお勧めする。ただし難点があり、足元が狭く後壁がそびえ立つ、若干釣りづらい構造になっていること。後壁があるのでルアーキャスティングは難しく、長竿を使ったフカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りや、短竿でのズボ釣り、サグリ釣り、夏季の落とし込み・ヘチ釣りがスタンダードな釣り方である。

このうちフカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りは、外向きと同様に特定の場所でしか釣れず、シビアな釣り座選びが釣果の明暗を分けるようだ。時期に応じたピンポイントを知る常連がチヌ、グレ、時にはマダイなどの獲物を手中にしているのを尻目に、慣れない釣り人はゲストに遊ばれて終わりという難しい釣り場だが、通い慣れれば大阪湾よりも数・型に恵まれる好釣り場と言えよう。

なお、内向きが狭く釣りづらいからといって、釣り人がいるのに自分だけ階段に登って上から釣るのは迷惑行為として基本NGなので要注意。

内向きはカゴ釣りも人気だが、カゴ釣りについては後の新波止の解説で触れる。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴壁がキャストを妨げる旧波止内向き(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

新波止

新波止も外向きはテトラが積まれているが、西半分の十字型テトラと、東端のテトラは足場と隙間の状況が危険過ぎて登れない。ルアーフィッシングは辛うじて船着場2番周辺のテトラからのキャスティングに限定される。

新波止は足場がフラットで広く釣りやすい内向きでの釣りがメインで、水深は壁際で10m近くあり、海面との高低差は6mぐらいなので、タモ網は最低でも6m以上が必要だ。フカセ釣り、紀州釣り、カゴ釣りがスタンダードで、中でもカゴ釣りが人気だ。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴新波止は内向きに釣るのが基本(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

2種類のカゴ釣り

カゴ釣りのさしエサはオキアミだが、釣り方は2種類ある。一つはフカセ釣りと同様に底近くのタナで、チヌ、グレなどを狙う近投のテンビンカゴ釣りで、テンビンカゴ釣りとオキアミをメインにアミエビや少量の集魚材を混ぜて大きめのまきエサカゴに詰める。タックルや仕掛けは他の地域でも行われているもので通用するが、極めたい人は前半で紹介した2店の釣りエサ・釣具店にアドバイスを受けるといい。

もう一つは、この地域で平鯵(ひらあじ)と呼ばれている30cm級のマアジや大サバを狙う「超遠投」のテンビンカゴ釣りだ。「超遠投」と評したのは、最低でも40mぐらい、日によっては50m近くまで仕掛けを飛ばさないと魚の回遊層に届かないからである。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴カゴ釣りの人気ターゲット平鰺(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

常連達のタックルの主流は、5m以上の磯ザオ4号(名手の中には3号も)にロケット羽ウキと、金属製の細身で柄の長いカゴテンビンの組み合わせで、サオの弾力によるしなりを生かした超遠投を行うために、まきエサカゴはシャトルカゴ、アポロカゴ、ジェットカゴといった製品名の小さめのオモリ付きカゴや、サビキ釣りのドンブリカゴをセットしている。

ちなみに私は魚に抵抗感を極力与えないことを最優先にして独自のパイプテンビンタックルを使用しているが、空気抵抗のため超遠投には向かないので念のため。

関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴水軒一文字でのカゴ釣りタックル(提供:TSURINEWSライター伴野慶幸)

超遠投のカゴ釣りの難しさは他にもあり、タナは8~13mぐらい、魚が回遊する釣り座も船着場3番、4番、5番のどこが当たりになるかと、日替わりなのが常連達ですら頭の悩ませどころとなっている。当たれば二桁釣果、外れれば丸ボウズという難しさはあるが、通い詰めて経験値を積むことで、釣趣も食味も抜群の平鯵を手中に収める確率は高まると思う。

<伴野慶幸/TSURINEWSライター>

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