いまや養殖魚の中で最もポピュラーなもののひとつ・ブリ。そんな食卓に欠かせない養殖ブリですが、今年の夏は異常な高騰が続きました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
価格高騰の切り札は「人工種苗」
このように、養殖ブリの価格が、天然資源であるモジャコの漁獲量によって左右されてしまうことは長い間業界の懸念事項とされてきました。そこでいま、解決策となろのではないかと期待されているのが人工種苗モジャコです。
これは親魚から採卵して孵化させたモジャコで、天然資源に影響を与えず環境負荷が少ないことや、好きな時期に養殖をスタートすることができる(=供給が少なく需要が高い時期に合わせて成魚を生産できる)といった利点があります。
加えて稚魚から親魚になるまでの履歴が確認できる、選抜育種ができるなど、天然種苗と比べるとメリットが大きく、今とても注目されているのです。
しかし、人工種苗モジャコの生産量は現在年間200万匹程度。天然種苗の供給量が年間2000万~2500万匹であることと比べると圧倒的に少ない状況です。
この現状や今後の需要増を見据え、養殖ブリ生産量日本一の鹿児島県は、2018年に種苗生産施設を新設しています。今後この人工種苗の生産量が増えていくにつれて、こちらが主流となっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>