ペットとして馴染み深い「ザリガニ」と「ミドリガメ」。自然環境に与える影響が指摘されてきましたが、このたびその「輸入と販売」に規制がかかることになりました。
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アメリカザリガニとミドリガメ
日本における最も身近な生物のひとつであるアメリカザリガニとミドリガメ。しかしこのたび、これらの生物の販売や輸入が法律で規制されることになりました。
今月11日、環境省の野生生物小委員会が、アメリカザリガニと、アカミミガメ類などの一般的にミドリガメと呼ばれるカメ類の輸入・販売の規制を求める答申を正式にまとめたのです。この答申ではこれらのほか、販売目的の飼育、野外への放出などの規制についても求めています。
環境省の方でもこの答申を受け、規制を追加した外来生物法改正案を今月からの通常国会に提出する方針とのことです。
特定外来生物指定が間近
多くの日本人にとって、最も身近な動物とも言えるアメリカザリガニとミドリガメ。しかしこれらは一方で、いま最も話題となっている外来生物でもあります。
アメリカザリガニは非常に広食性かつ獰猛で、植物から動物まで様々なものを食べるため、移入された水域の生物相を貧弱にしてしまうという性質があります。
ミドリガメ類は適応力と繁殖力が高く、全国各地の内水面に広がり、在来カメであるイシガメなどの生息域を圧迫したり、交雑による遺伝子汚染を引き起こしてしまっています。
このような理由から、日本の自然環境に与える負荷が絶大とされ、アメリカザリガニとミドリガメ類は昨年秋に、外来生物法が規定する「特定外来生物」への指定が適当とされました。今回の答申もそれを受けてのものです。
指定のための「特例」
一方で、今回の答申では、特例として「ペットとして飼育することの容認」も求められています。ブラックバスなどのように、特定外来生物は通常、生体の移動や飼育についても禁止されるのですが、一体なぜでしょうか。
今回このような特例が認められる見通しなのは、逆説的であるが「環境保護のため」であるといえます。というのも、これらの生物はすでに多くの個体が飼育されている状況にあり、一般的な特定外来生物と同様の飼育・管理規制を行えば、法が施行される直前に、これらの飼育個体が一斉に自然環境下に放出されてしまう可能性が高いのです。
そのような状況が起こらないようにするため、今回「特別ルール」を新たに盛り込む必要があるのです。この特例のため、上記の通り、根拠となる外来生物法自体の修正も行われる見通しです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>