全国各地に定着し、生態系や漁業に被害を与え続けているブルーギル。釣りの対象としても人気がなく、役に立たない魚として蔑まされていますが、実はなかなか味の良い魚です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ブルーギル駆除プロジェクト
荒川にほど近く、板橋・北両区民の憩いの場となっている都立浮間公園。ここにある浮間ヶ池は都内の池でも屈指の大きさがあり、昭和52年より釣り場としても親しまれてきました。
しかしこの浮間ヶ池で、数年前から外来種であるブルーギルが大量繁殖しています。かつてよく釣れたフナやテナガエビといった在来種はほとんど釣れないような状態になっているそうです。
そこで公園ではいま「ブルーギルバイバイプロジェクト」というイベントを実施しています。これは園内に専用の回収ボックスを設置し、釣り人たちが釣ったブルーギルの回収を呼びかけるというもの。回収されたブルーギルは堆肥にして園内の花壇に用いられるといいます。
ブルーギルとは
ブルーギルは1960年に北アメリカより移入されました。食用魚として期待されるも、日本では原産地ほど大きく成長しなかったこと、身が薄くて骨が多く、食材として敬遠されたことから思うようには利用されなかったといいます。
その後各地の湖沼や河川に逸出・放流されたのですが、その繁殖力の高さや食性の広さからあっという間に定着してしまいます。そしてその貪欲な食性で在来種を食害し大きな被害を与えてしまっています。
彼らには他魚の卵を好んで食べる性質があり、しばしば「最悪の外来種」と思われがちなブラックバスよりも大きな影響をもたらすと考えられています。現在では特定外来生物に指定され、各地で駆除が行われています。
みんなで食べちゃおう
一方で、ブルーギルは実は知る人ぞ知る「美味な魚」。原産地ではフライやムニエルの材料として人気も高く、そのフライパンにピッタリの形状から「パンフィッシュ」という名前で親しまれています。
確かに骨は多いものの、上品な白身で柔らかくほぐれ、味が染みやすい良い身質をしています。加えて年に何度も産卵する性質があるため、卵巣を持つ個体も多いのですが、この卵巣がカレイのそれに似た質感をしています。そのため抱卵個体の煮付けは非常に乙な味がします。
ブルーギルの定着が問題となっている琵琶湖では「ビワコブナ」という商品名で加工されることがあり、鮒ずしと同じ「なれずし」にされることもあるようです。食材としてはかなり有益なものかと思いますので。水質の良い場所で釣れたらぜひ食べてみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>