アメリカザリガニが「特定外来生物」指定の可能性 気軽に釣るはNG?

アメリカザリガニが「特定外来生物」指定の可能性 気軽に釣るはNG?

日本中に生息し、ペットや釣りのターゲット、はたまた釣り餌としても高い需要があるアメリカザリガニ。しかしこの度、飼育・移動に強い規制がかかる「特定外来生物」に指定されるというニュースが報じられました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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アメリカザリガニが特定外来生物?

子供の遊び相手やペットとして人気が高いアメリカザリガニ。北米原産の外来生物でありながら日本に住む生物の中でもトップクラスに高い知名度があり、またどこの川や池にもいる非常に身近な生き物です。

アメリカザリガニが「特定外来生物」指定の可能性 気軽に釣るはNG?街なかのアメリカザリガニ(提供:PhotoAC)

しかしその一方、彼らは水田に巣穴を掘ることで漏水させてしまったり、若い稲を食害してしまうなどの被害を与えます。またその旺盛な食欲で在来生物を食害してしまうため、日本の環境に甚大な被害を与えてきました。

そしてついにこの度、環境省はアメリカザリガニを「特定外来生物」に指定する方向で検討に入った、というニュースが報じられました。以前より当種は、有害な外来種を管理するためのリストである「生態系被害防止外来種」には含まれていたのですが、その中でもより強い規制をかけるべき生物として認定された、ということが言えるでしょう。

他外来ザリガニは指定済

「特定外来生物」とは、生態系や人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす可能性が高い生物について、外来生物法に基づき指定するものです。指定されるとその種を許可なく移動したり飼育することができなくなります。

実はアメリカザリガニ以外の外来ザリガニ類はすでに、昨年11月に特定外来生物に指定されています。外来ザリガニ類はいずれも高い繁殖力と何でも食べる貪欲さを持っており、移入された先の環境に甚大な被害を与えてしまうのです。

しかしその一方で、アメリカザリガニは身近に生息しているため捕まえやすく、生命力が強いことから、現在非常に多くの場所で飼育され、また学校教育の場でも観察対象としてポピュラーな存在になっています。

アメリカザリガニが「特定外来生物」指定の可能性 気軽に釣るはNG?子供の「釣り」の相手としてもおなじみ(提供:PhotoAC)

そのため、仮にこのまま特定外来生物に指定されることが決定すると、現在飼育している人や機関が慌ててアメリカザリガニを自然環境に放流してしまい、その環境が悪化してしまうことが危惧されます。

そうならないよう、当種に関しては「特定外来生物ではあるが、いくつかの条件下において飼育はOKにする」などといった新たなルールが設定されるのではないか、と予測されています。

ザリガニは釣り餌に使えなくなる?

さて、このアメリカザリガニですが、「釣り餌」としても非常にポピュラーな存在です。淡水性の生物である彼らですが、淡水魚のみならず海水魚にとっても非常に良い餌で、ハタやイシダイ、マゴチなどの高級魚も釣ることができます。

釣具屋で購入すると安くはないですが、身近な環境にも生息しているので自力で捕獲することも容易。「海老で鯛を釣る」ではないですが、最もコストパフォーマンスに優れた餌と言えるのです。

アメリカザリガニが「特定外来生物」指定の可能性 気軽に釣るはNG?マゴチ釣りでは特餌として知られる(提供:PhotoAC)

しかし、仮にこのまま特定外来生物に指定されると、もし現状の外来生物法のルールを適用すれば「生体の持ち運び」ができなくなるため、活き餌として使えなくなってしまいます。そうなると餌としての価値は大きく下がると言わざるを得ません。

特別ルールの可能性も

ただ、今回は事情が特殊なため、上記の通り「飼育とそのための捕獲・移送のみOK」という形で新たなルールが適用される可能性もあり、そうなればアメリカザリガニが本来生息できない海水域での釣りに限り、今後も同様に釣り餌として使用できるかもしれません。

いぜれにせよ、現状での判断はまだ困難といえます。詳細の決定・発表を待ちたいですね。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>