先日発生した地震に絡み、全国各地で発生していた魚介類の異常行動を関連付ける意見がメディアで散見されています。果たして本当に関係はあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
本当に地震と関係あるの?
しかし、これらの現象は本当に地震と関連性があるのでしょうか。
イワシ類は食物連鎖の下位に位置する魚で浅い場所に多く、肉食魚に追われたり、荒天時に波に揉まれて浜辺に打ち上げられることはよくあります。ボラは餌や高水温を求めて浅瀬に大量に集まることがよくあり、また海水魚の中でも特に川を遡上しやすい種として知られていて、大量に遡上するのは毎年発生するごく普通の現象です。したがって、いずれも地震との関連性はさほど高くはないと考えるのが自然です。
地震の前後に動物たちが異常行動する例は「宏観異常現象」のひとつとして知られますが、そもそも動植物は地震以外の理由によっても通常と異なる行動・反応をすることがよくあります。地震と動物の行動の関連性の以前に、動植物自体についてまだわかっていないことも多いのです。
同様に「宏観異常現象」とされる深海魚の打ち上げについては、関連性が低いという研究結果がすでに存在しています。(「珍しい深海魚が現れると大地震が発生」はウソ? 大学が関連性を調査)前提として地震の前兆現象も解明できていない部分が多く、地震の前に動物たちが異常行動・反応をする理由について、現時点では科学的に説明は不可能なのです。
もちろん「関連性がない」と結論づける必要もなく、今後研究が進むことでより詳細がわかってくると考えられます。宏観異常現象が「地震に備えよう」という動きにつながるのならよいものといえるでしょう。逆に、不安を煽るだけのものになってしまうような状況では、その存在価値はありません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>