島根県にある日本屈指の汽水湖・中海と宍道湖で、最近増えている「厄介な食材」を使った、とあるB級グルメが話題になっているようです。
(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)
アカエイをハンバーガーに
島根のシンボルとも言える宍道湖・中海という2つの汽水湖。非常に豊かな水域で、「宍道湖七珍」などといった特色ある漁獲物で知られ、漁業が盛んに行われている重要湖沼です。
しかしそんな宍道湖と中海で、最近漁師を悩ませている魚がいます。それはアカエイ。
魚介類から底生生物まで幅広い食性と貪欲な性質を持つアカエイは、重要な漁獲物を食害してしまう厄介な存在です。最近は数が多くなっているようで、特に宍道湖では捕獲数が2005年から10倍にもなっているといいます。
アカエイは美味しい
そんな困り物のアカエイを、なんとハンバーガーにして売ってしまおうという試みがいま行われています。
企画を主導しているのは島根大学の学生。漁師が困っているという話を聞き、誰でも気軽に食べられるB級グルメにしてエイのことを広く知ってもらおうと思ったのだといいます。(『意外といける! 宍道湖・中海の厄介もののエイがB級グルメに変身!(島根・松江)』山陰中央テレビ 2020.12.11)
実はアカエイは、エイの仲間の中では最も美味しいとされるもの。有明海や瀬戸内海など内湾の沿岸では、古くから食用にされてきた歴史を持ちます。軟骨魚類に共通する特徴として「鮮度が悪くなると独特の臭みが出る」という難点こそありますが、新鮮なうちは刺身でも美味しいほど。
未利用魚はハンバーガーになりがち?
今回の宍道湖のアカエイのように「多数棲息している・漁獲されるが、利用はされていない魚」というものは全国各地に存在します。このような魚を未利用魚といい、その量は全漁獲量のじつに1/3を占めるという説もあります。
最近は主要な漁獲種の減少が起きていることもあり、水産資源の効率活用という観点から、この未利用魚を見直そうという意見がしばしば語られます。そのため、未利用魚を用いた食品やメニューの開発が盛んに行われています。
そしてこれについて調べるとなぜか「未利用魚のハンバーガー」というものがやたらと目に付きます。軽く挙げていくだけでも「静岡・沼津の深海ザメバーガー」「茨城・行方のアメリカナマズバーガー」「滋賀・大津のブラックバスバーガー」などいくつでも例を出すことが可能です。
ハンバーガーは「具材をカツにして揚げ、パンに挟む」という調理上の特徴から、見た目が悪い・食感が悪い・水っぽく味が薄いという魚も美味しくすることが可能です。更にその手軽さ、そして何よりも「料理としての敷居の低さ」が、知名度の低く食指が動きにくい未利用魚という素材の活用に最適である、といえるのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>