釣りの用語として使われる「仕掛けがなじむ」。独特な表現ですが、「なじむ」にはどんな意味が含まれているのかを紹介します。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
釣り用語としての「なじむ」
「なじむ(感じでは馴染む)」の意味を調べてみると、「人(や物事、場所)に慣れて親しみを持つ」という意味や、「味わいなどがほどよく調和した状態」が紹介されています。また、似た言葉に「おなじみ」という言葉も良く聞かれますね。
釣りをする上でよく言われるのが「仕掛けがなじむ」と言う言葉です。簡単に言うと、「仕掛けがイメージした最終的な状態になること」です。
たとえば、潮の流れなどを考慮しない場合、仕掛けをポンと水の中へ放り込んでしばらく待つと、ハリスやハリの重みで徐々に沈んでいき、最終的に仕掛けが立った時点で落ち着きます。この状態が仕掛けがなじんだ状態です。
フカセ釣りでよく使われる
この「なじむ」と言う言葉はチヌ(クロダイ)やグレ(メジナ)を狙ったウキフカセ釣りでよく使われます。また、船からの完全フカセやテンビンフカセなどでも使われることが多いのですが、その共通点はハリスからハリにかけての仕掛け部分が軽い釣りです。
たとえば胴突き仕掛けや波止のサビキ釣りは仕掛けの下にオモリが付いていて、一気に沈めるため、前述の「イメージした最終形」になるのがオモリの影響で速く、さらにはオモリが付いているため「なじむ」というイメージは少ないように思います。
「なじむ」を邪魔する潮や風
軽い仕掛けの場合、オモリは使わなかったり、ごく小さなオモリだけで、ゆっくり、ジワリと沈めていくことになります。そのため、最終的な形態になるまでに時間がかかりますが、この途中は「まだ仕掛けがなじんでいない」ということになります。
また、仕掛けが軽い分、潮の影響や風による道糸の影響などを大きく受けて、せっかくなじもうとする仕掛けの邪魔をすることになります。
「なじむ」ことの重要性
では、なぜフカセ釣りなどの軽い仕掛けにおいて「なじむ、なじまない」とよく言われるのでしょう。実は仕掛けがなじむことは魚を食わせるためには非常に重要な要因だからです。
たとえばグレの釣りの場合、潮の流れに乗せてまきエサでグレの活性を上げ、その中にさしエサの付いたハリを紛れ込ませます。なので、まきエサとさしエサが同じように流れる必要があります。これがまきエサとさしエサの同調です。
このとき、ハリスがピンと張っていない塊のような状態で流れていくと魚には大きな違和感となり、エサを口にしません。
理想は「さしエサ先行」
理想はさしエサが潮に乗って先に流され、ハリスより上のウキ、道糸などを引っ張ってくれる状態です。理由は潮の流れて来る方向に向いてエサを食べている魚に対して、さしエサを先に流すことで、ハリスなどの仕掛けが後方にあるため見えにくいと言われています。エサだけが流れてくるように見えるため、違和感なくエサを食べてくれるのです。
仕掛けがピンと張って、さしエサが先行した状態が「なじんだ」状態なのです。逆にウキが先行して、エサを引っ張ってしまうとエサよりもハリスの方が前に出てしまいます。魚にとってみればまず、ハリスがやってくるので違和感を覚えるのでしょう。この状態が「仕掛けがなじまない」という状況です。