魚釣りをする人なら一度は出会ったことがあるであろう「ネンブツダイ」。お目当てのサカナを釣るより先に釣れてしまうため、ゲストの代表魚として知られています。見たことはあっても意外と知らないネンブツダイの生態と飼育方法を紹介します。
(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)
ネンブツダイはどんなサカナ?
ネンブツダイは、スズキ目スズキ亜目テンジクダイ科に属するサカナで、赤い体に黒い線が特徴的な比較的小さな海水魚です。漢字では「念仏鯛」と書き、釣り人からは「キンギョ」と呼ばれることが多いサカナです。
生息地
日本では、多くの地域で見かけますが、実は東北地方や一部を除いた北海道には生息していないと言われています。日本国外においては朝鮮半島や台湾、中国東南部で発見された事例もあるようです。
ネンブツダイは沿岸に近く、比較的水深の浅いところで群れになって生息しています。その他、海藻が多く生えているところや、身を隠せるような環境があるところを好んで縄張りにする習性もあります。
釣り方は様々
冬は水温の低下に伴って、深場に移動してしまう個体もいますが、年間を通して堤防や磯、消波ブロックの近くで比較的簡単に釣ることができます。
サビキ釣りやエサ釣りなど、釣り方を問わず、目的のサカナよりも先に釣れてしまうため、外道と呼ばれたり、邪魔者扱いされてしまっているちょっと悲しいサカナです。
なぜ「念仏」とつくのか
ではなぜ名前に「念仏」と入っているのか?気になっている人も多いはず。実は、この由来には諸説あり、どれが本当なのかは定かではありません。
その中で最も有力な説としては、
『繁殖期になると浅瀬に集まり繁殖行動を行う際、求愛行動の一つとして音を出す習性があり、その音が「ブツブツ」や「ボツボツ」といった音のため、遠くから聞くとまるで念仏のように聞こえたから』
というものです。
求愛のための音がまさか念仏のようだと言われているとは、まさか彼らも思っていないでしょう。
子育ては口内保育(マウスブリーディング)
一般的なサカナは卵を産む際、海藻に産みつけたり、砂の中に産み落とすことが多いですが、ネンブツダイはこれらの一般的な産卵方法は行いません。
ネンブツダイは、メスが産んだ卵をすぐにオスが食べてしまいます。食べてしまうと言っても飲み込むことはありませんので安心してください。
オスは口の中で卵を管理し、無事にふ化するまで外敵から卵をきっちりと保護する口内保育(マウスブリーディング)という方法をとります。
この方法を行うことで、卵を保護できるだけではなく、卵には常に新鮮できれいな水を供給することができます。
卵の健康状態をよりよく保つのに最適の方法と言えます。口内保育する種類のサカナは珍しいため、ネンブツダイの大きな特徴のひとつでしょう。
もしかしたらそれは違うサカナかも?
釣り人の皆さんは釣り上げた時に、赤い体色、そして頭が大きくて体の小さいシルエットを見ただけで「あーネンブツダイね」と思うかもしれません。
しかし、そのサカナはもしかしたらネンブツダイではないかもしれません。実はネンブツダイと極々似ているサカナで【クロホシイシモチ】というサカナがいます。
このサカナは伊豆以南に生息しています。ネンブツダイとも生息域が重なっているため、海の中では当たり前のようにネンブツダイとクロホシイシモチが群れていることもあります。
この2種はかなり似ていますが、大きな違いは頭の後ろの模様です。ネンブツダイは目の上を通るラインが背中まで伸びているのに対し、クロホシイシモチはラインが短く、目の上で切れています。
そして、クロホシイシモチにはエラの上部に名前の由来にもなっている黒い点があります。
このように2種には似ていても大きな違いがあるため、釣り上げた時は一様に「キンギョ」と言うのではなく、しっかりと線が長ければネンブツダイ、黒い点があればクロホシイシモチと呼んであげてください。