生物学的に近い「サメ」と「エイ」。その中でも両者の特徴を併せ持つ中間的な魚たちに注目してみました。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
エイみたいなサメ
軟骨魚類と呼ばれるグループに属し、いずれも一般的な魚類とは全く違う進化を遂げたエイとサメ。彼らは違う魚として扱われるものの互いによく似ており、一見するとどちらかわかりにくいものもあります。
カスザメ(提供:茸本朗)そのひとつが「カスザメ」。カスザメはまごうことなきサメの一種なのですが、平べったい体型で海底にへばりつき、まるでエイの一種のように振る舞います。
ただし捕食行動はエイよりもサメに近く、目の前に来た餌を目にも止まらぬ速さで飲み込む様子はまさに獰猛の一言です。
サメみたいなエイ
エイみたいなサメがいる一方で、逆にサメみたいなエイもいます。そのひとつがサカタザメ。
サカタザメの一種(提供:PhotoAC)サカタザメは体の後部は確かにサメのようなすらっとした体型、長い尾鰭を持っていますが、全半身はまさにエイのように平べったく、鰓穴が海底に向かって開いています。エイとサメの違いは鰓穴が横につく(サメ)か下につく(エイ)かで判別することになっているので、サカタザメは分類学上はエイということになります。
同じような魚にウチワザメがあり、こちらも後半身はサメのようですが全半身はエイそのものです。われわれ日本人は、エイかサメかを判別するのに「体の後ろ側」を参考にしがちなのかもしれません。
サメでもエイでもない軟骨魚類
さて、軟骨魚類といえばサメかエイかという話になるのですが、実は「サメでもエイでもない」軟骨魚類がいます。それはギンザメ。
ギンザメ(提供:PhotoAC)ギンザメはサメと名がつきますが、ギンザメ目という独立したグループに属します。サメやエイとの違いは鰓穴が一つしかないことで、これらと比べ原始的な形態を残している種だと考えられています。
一度食したことがありますが、エイともサメとも異なるフワフワした身質で不思議な食感でした。ただし利用される際にはエイ・サメと同様に練り物原料にされることが多いようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

